レディストーカー(前)
「これが迫真の立体RPGだ!」が売り文句のゲーム。立体RPGってなんやろ? と画面をたちあげてみて、思わずニヤリと笑ってしまいました。立体感溢れる画面を作り上げることへの欲望は、テレビゲームにおいて並々ならぬものがあり、ポリゴン画像やバーチャルボーイの3Dはその典型でしょう。ところがこれは、それらとは全く発想を異にしていて、要するに単なる立方体の集積画面なんやね。
覚えてませんか? 子どものころ、画用紙という平面の上に、立体を描けることを知ったときの感動を。遠近法はまだ知らなくても、立方体が描ければ、あら不思議、画用紙から浮き上がって見えるではありませんか。それを学んだ当時、私なんぞはうれしくてうれしくて、しょっちゅう立方体を描いてました。
このゲームは、そんな単純で、ドキドキする画面構成をしているのやね。それは画面のみならずゲーム内容までも貫いていて、世界と人類の危機がどしたらこしたらで、勇者がどしたらこしたらではなく、まるで遊園地かテーマパーク。罠あり謎ありのハラハラの連続やけど、それも決して難しくはなく、程よく適度な緊張感。テレビゲームとは、やりこんで極めるものではなく、本来楽しむものなんやと考える人には、最適やね。映画でいえば、とてもセンスのいいB級です。
レディストーカー(後)
私としてはこのゲーム、かなりオススメなんやけど、どうやらセールスはイマイチみたいです。ソフト屋での値下げは早かったし、その率もかなりのものやったから。
原因の一つとして、主人公が女の子であることが考えられます。「アンジェリーク」のときの話とも関連しますが、プレイヤーが男の子であるのを前提としてしまっているこのメディアの、しかも主人公=プレイヤーとの思い込みに誘うことによって、物語世界に感情移入させるというのが、これまでの常道やったロープレでは、女の子の主人公と共に冒険の旅をする気分になれなかった。それも彼女のキャラクターが極悪不良娘で、攻撃方法が足蹴りとムチというのでは、回復魔法専門のカワイイ女の子を従えて旅をするのに慣れた男の子には、シンドイってね。
とはいえ、逆に言えばそうした要素は、女の子のプレイヤーには快感になる可能性は大きいことになる。だから、「アンジェリーク」みたいに、女の子のための初めてのロープレってノリで売ったほうが良かったのかもね。その辺りがおしい。
けど、パイオニアにリスクはつきものなんやから、もっともっとこの手のセンスのいいソフトを、開発して欲しいな。
この方向はいずれ花が咲くと私は思う。