ライフスケイプ(前)

 昨年NHKで放映された、「生命40億年はるかな旅」がベースのソフト。日本初の宇宙飛行士毛利衛氏の案内で、なんだかやたら数が多い人類誕生までの進化の過程を描くこの番組、ついつい毎回見てしまってました。紹介される事どもはさして目新しくはないけど、アプローチがなかなかなものやった。例えば、化石でしか残っていない古代生物を3DCGで再現する。化石は子供の頃から教科書や図鑑で見慣れているし、それから描き起こされる想像図(あれってその生き物の死骸に見えてしまうのは何故やろう?)ってのもおなじみ。でも今回は動いた。もちろん「ジュラシックパーク」ですでに、「もうええ、分かった。頼むからこっちに来んといてくれ」って程、その体験はしているわけやけど、あれって「どや怖いやろ、どや本物そっくりですごいやろ」のノリがうざったがった。でもこの番組、そんなケレンやなくて、例えばカンブリア紀にフツーに生息していた海洋生物アノマロカリスなんてのを泳がせてくれてました。つまり、肩に力を入れずに、当時の日常生活(?)を再現していたわけ。しかも、こいつは当時最強の捕食生物やったらしいのですが、どんな風に他の生物を捕まえたの か、どんな口で食ってたのかを現在のシミュレーション技術とロボット工学技術を駆使して実験し想像したのね。これが結構ワクワクものでした。
 科学で遊ぶ。この快楽が良く伝わってきた。さて、このソフトの場合は?

1996/03/27

ライフスケイプ(後)

 生命誕生から霊長類まで、8つの部屋を未来カーに乗り込み次々に辿るCGは素晴らしく、流星号に乗った気分になれます(流星号? 四〇過ぎのおじさんに尋ねればみんな知っています)。個々の部屋には三つのインターフェイスがあり、学習、観察、実験にそれぞれ対応している。一つ目は、NHKの画像を取り込んだもの。けど十回放映された番組を全て収めることは不可能やから、おいしい部分だけをピックアップ。よって、どれもこれも中途半端。二つ目はちょっと「科学で遊ぶ」っぽくなっています。例えば、骨格だけの翼竜を飛ばし、骨格の構造と飛行の関係を観察できる。けどこいつも「え、たったそんだけ?」、なんやね。最後の実験室、こここそまさにTVゲーム上で「科学で遊ぶ」の真骨頂である部分。カンブリア紀では捕食生物アノマロカリスから逃れながら泳ぐネクトカリスを操作します。哺乳類の部屋では、マウスとなって木の実を食べ、糞をすることで植物が育ち、その植物がまた木の実を落とすといった食物連鎖をシミュレート。でも、ただのミニゲームの粋を出ていないのね。
 生物進化をTVゲームならではのプレイヤー参加型で捉え直し、エデュティメントの新しい方向を指し示す、魅力的な試みのはずが欲張りすぎて、底を浅くしてしまった。カンブリア紀ならカンブリア紀だけに絞って、もっと奥深いゲームに仕立ててくれたらなと残念。

1996/04/03