YUKIE NAKAMA(前)
新品なのに一千九百円のソフトを五枚発見して、安い、安すぎる! と感動したけど残念。これは、ゲームソフトやなかった。新人歌手のデビュー楽曲が二曲とインストゥルメンタルの計三曲に、二百二十点以上の写真集とプロモーションビデオクリップ、そしてオリジナル編集モードが収録されていて、「次世代音楽ビジュアルソフト」と名付けられたものです。これだけのもんがたった一千九百円のCDで楽しめるのなら、やはり安い、安すぎる。
プレイステーションの新たな使い道を考えるに当たって、さすが音楽業界の大手でもあるソニーさんだけのことはあって、単なる写真集やタレントの名前を冠したゲームではなく、まず楽曲と歌手があり、それにどう付加価値をつけるかという発想から入っているんやね。
プロモーションビデオは今では情宣活動にとって必須のアイテムやし、写真集もステータスの一つ(ヘアなんとかは知らぬが)。せやからこれは、一人のタレントを売り込むときのアイテムキットをそのまま一枚のCD−ROMにしたようなもの。
しかも、プロモーションビデオを自分で編集できる機能までもが付いているわけで、ディレクターのまね事ができる。
つまり、単なるファンよりもっと近い場所にいる気分が味わえる。この「もっと近い場所」という錯覚こそが、ファンたるものの基本的なアイデンティティやから、このソフト、コテコテに正しい、正しすぎる。
YUKIE NAKAMA(後)
「次世代音楽ビジュアルソフト」、試しに一本、仲間由紀恵はんのを買ってみました。
ウリの一つである編集モードは、モニター上部に現れる仲間はんが歌っている四つの画面の中から好きなのを次々にクリックすると、それが中央に映し出され、オリジナルのプロモーションビデオができあがるもの。それがどうしたと言われれば、それだけの話。けど、もし三〇年前に、酒井和歌子はんのが出ていたら私は幸せやったに違いない。つまりファンならこんなに楽しい作業はないのね。
もう一つのウリの写真集。ジャケットでは二二〇枚、マニュアルでは二八〇枚と書かれていて、どちらが正しいのかは不明やけれど、どっちでも情勢は変わらない出来。ただ単に仲間はんの写真を二百何十枚撮ったのでお見せしましょってだけ。コンセプトが見えず、オマケはやっぱりオマケやなーって感じ。「生写真風なのや」と無理矢理自分を言い聞かせてもね。
購買層がPSユーザーに制限されるから、予算的にしんどかったのか。あっ、てことはそんな場所で仲間はんはデビューしたんやな、大変やと思って事務所に問い合わせたら、同じタイトルで既にシングルをリリースしているとのこと。
PSだけやとシンドイけど、企画としては正しいから、今後台頭してくるパソコン世代(物心ついたときから側にそれがあり、違和感を持たない世代)になら新しいジャンルとして成立する可能性はある。しっかりと作ろうよ。
_