NOEL(前)
これ、恋愛シミュレーションの一つなのですが、プレイヤーの恋愛対象となるアニメ絵の美少女たちのお姿を、発売かなり以前から関係雑誌に露出していました。主に水着で。彼女たちの誰かを好きになってしまったら、これをプレイせずにはいられないだろうという目論みやね。
このジャンルの代表格「ときめきメモリアル」が長い間支持され続けているのは、ゲームシステムのおもしろさばかりではなく、藤崎詩織を筆頭に、そこに登場する女子高生たちがアニメ絵による美少女の典型姿やったことにあります。彼女たちは生身の女の子の匂いを全く発していない。アニメ絵やから当たり前みたいやけど、絵は現実の似姿ですから、描く手法がリアルであれ、メタであれ、ディフォルメであれ、本当は現実により近づこうとしています。ピカソの例のあれらの絵なんかも結構生々しいもんね。
ところが藤崎さんたちにはそれがない。「いかにも」の「カワイイ」がそこにあるだけ。プレイヤーたちはその中のお気に入りの「カワイイ」女の子に、自分好みのフレーバーをふりかけることが容易くなっているんやね。せやからゲームを終えても次から次へと物語はプレイヤーの中で紡ぎ出されて行く。
このソフト、「ときメモ」との差異化のため、生々しさをいかに出すかという冒険をしています。自室にいる女子高生(もちろんアニメ絵のですよ)とTV電話でお話しするわけ。
NOEL(後)
海辺で知り合った女子高生の一人から、あなたにTV電話がかかってくる。あなたがプレイしているブラウン管がそのTV電話であるという段取り。
学校生活のこと、友人のこと、家族のこと、趣味。彼女は自分に関するさまざまなことをあなたに話してくれます。静止画像でなく、彼女のしぐさは生々しくリアル。
画面の下を時々、会話ボールなるものが流れてくるから、それをゲットし、プールしておく。彼女が一息ついたとき、あなたは、彼女から聞きたい話題のボール、例えば「寮」をすかさずクリック。すると彼女は寮生活に関して話し始める。次からはあなたからコンタクトを取る。時間帯によって、留守やったり話中やったり。「確か、今夜は家に居るというてたはずやのに。どこへ遊びに出掛けてるのやろ」と、しつこく電話をすると嫌われるのでご用心。
節目節目には体育祭、文化祭などでの彼女たちの姿を写したビデオというものを見ることができるようになる。ご褒美ね。
そうして段々、誰かと親しくなり、
「何やそれ、TVゲームのテレクラやな」。とは友人の言葉。
近ごろ若者からの恋愛関係の悩み相談が減って来ている。それ以前の人間関係にまずつまずいてるみたいだ。とはカウンセラーから聞いた話。
その状況と、このソフトが提示した方法がどう切り結んで行くかはまだ見えないけど、今後ひとつのジャンルを形成する可能性は大やろうね。