ペルソナ(前)

 ファンにはメガテンという略称で親しまれている、「女神転生」シリーズの最新作。ロープレです。
 ロープレでシリーズ物になるほどの人気を博している作品は必ず、「ドラクエ」との差異化の部分で光っています。グループサウンズでたとえれば、「ドラクエ」がブルーコメッツとしたら、このメガテンはザ・テンプターズかな(比喩が古すぎて解りませんか。すまん)。要するに「ドラクエ」の健全っぽいイメージと比べて、メガテンはダーク。
 画面は屋内が3D、屋外が2Dなんやけど、この屋外、ドラクエだと主人公以下何人かの仲間が、古地図風のフィールドマップの上を進んで行く。ホンワカと暖かい。もちろん突然モンスターが現れてバトルとなったりはするけど、いかにもそれはノスタルジックな冒険の旅の趣。そのことによってプレーヤーの心を浮き立たせること。それは他の多くロープレにも共通した雰囲気です。ところがメガテンの2Dフィールドマップは、クール。プレーヤーを突き放している。風景は直線を主体に構成されており、設計図に近い。そこを歩いて、次の目的地まで進む主人公はといえば、逆三角錐の上に球体が乗っかった、そうですトイレの男性マークを立体化したような記号で表されるだけ。これに比べたら、サイバーパンクのほうが余程愛想がある。このクールさ、突き放し方、明らかに「ドラクエ」的なほのぼのとした少年の成長ドラマに対する異議申し立て。

1996/11/06

ペルソナ(後)

 メガテン最大の売りは、モンスターとの交渉。バトルに突入したとき、戦わず仲間(メガテンではそれを仲魔と呼ぶ)になるように説得することができる。もちろん簡単に仲魔になるわけはなく、何時(夜か昼かや、月齢がかなり影響する)、何処で、誰が、どのモンスターに、どんな方法で交渉するかによって、事態は複雑に変わってくる。しかも交渉に失敗すれば、モンスターの先制攻撃になってしまうから、リスク覚悟の行動となる。「けど、仲魔にすれば、モンスターはどうせ、『ドラクエ』の仲間システムみたいに、パーティの一員として力強い味方となってくれるんやろ」とほざく貴兄は甘い。まだまだ若い。合成せなアカンのよ、これが。モンスターといえども生き物。そいつらを、遺伝子工学か魔法かはともかく、二体使って混ぜ合わせることによって、強力なパーティの一員を作り上げる。これって結構、気分的には抵抗があるんやね。マッドサイエンティストになるのは。しかもこの合体、必ずしもより強力なモンスターが出現するわけでもない、もちろん失敗となることもある。ここでもリスク。極めて現実臭い価値観。
 メガテンから香ってくるのは、架空世界で勇者になりたいプレイヤーに水をさそうとする欲望。今回のタイトルに「ペルソナ」って言葉を選択するセンスからもそれは伺えます。
 けど、阪急のペルソナカードでモンスターと交渉できたらもっとうれしいと思ってしまった私は、何物なんやろう?

1996/11/13