トルネコの大冒険(前)
スーパーファミコンには、冒険をテーマにしたソフトがたくさんある。
主人公は、王子様、気弱い少年、旅をする少年、ただの町っ子の少年と様々だが、お約束事は、ひょんなことから彼は世界が何者かの野望によって崩壊の危機に瀕しているとを知り、それを阻止すべく、長い長い冒険の旅にでるというもの。もちろん最後にはボスをやっつけ、めでたく世界は救われる。
とてもシンプル。
やっぱり子ども向けだな、ですか? それに、「世界を救う」やなんて、ちょっとおおげさで、気恥ずかしいでぇ。ええ大人ができるかいな。
なるほど。
はい。なら、このソフトがオススメ。タイトルは「トルネコの大冒険」。
冒険ではなく大冒険だから、世界どころか宇宙を救ってしまいそう。でも違う。トルネコが守りたいのは世界でも宇宙でもなく、自分の妻子、家族の幸せ(なんやごっつう、親近感)。
彼は少しお腹の出た中年の商売人。趣味は冒険。店を開こうとやってきた村に不思議なダンジョンがあると聞いて、行きたくてしょうがない。でもお店は開いたばかりだし‥‥。
一方、妻のネネさん思うには、そこから宝物を拾ってきてくれれば店で売ることが出来る。
ダンナの趣味と実益一石二鳥。大賛成して、お弁当を持たせて送り出す。
うーん、親近感。
トルネコの大冒険
(後)
それが仕事であれ趣味であれ、何かの目的に向かって努力する。その努力がすべてロスもなく積み重なり、目的が達成される。
なんてことは、ないですね。ロスどころか、時には全部が水の泡って事態もある。
けれど、ゲームの場合、主人公たちはモンスターと戦えば戦うほど確実に強くなる。努力はその努力の多寡だけ報われる。
それは、「世の中はなあ、努力しても水の泡になることが一杯あんねんでぇ」などと子どもの努力に水を指すのはいかがなものか? という配慮が働いているのかも。
一方「トルネコ」は、すべての努力が一瞬にして水の泡がテーマのゲームです。
「幸せの箱」があるという地下二七階まで、お金を拾ったり宝物を見付けたりしながら進む間で、モンスターを倒し強くもなっていくのですが、一度でも負けると、お金も宝物も全部なくし、強さも元にもどる。水の泡やね。
気を取り直して、再びダンジョンに入ると、なんと、迷路の形は全く違っているしまつ。
でも、お金も宝物もやっぱり欲しいし、それは妻子を養うためでもあるし、自分の冒険心を満たしてもくれるし、だから、何度でもトルネコは挑戦してしまう。
それはとてもコテコテな日常的行為やから、大人のほうが、感情移入しやすいソフトやね。
私は一年間遊びました。 .
1995/04/12