研究・日本児童文学
総目次

日本児童文学学会編
東京書籍 1995〜

    

研究=日本の児童文学2 1997.04.21刊
児童文学の思想史・社会史 目次

総論
日本児童文学の成立--思想史・社会史の視点から--関口安義 11
1 はじめに 11
2 キリスト教と児童文学 12
 (1) 外国人宣教師の活躍 12
 (2) 児童文学のさきがけ 14
 (3) 『喜の音』の出現 16
 (4) 田村直臣の仕事 17
3 教育の普及と児童文学 18
 (1)寺子屋から近代教育へ 18
 (2)啓蒙思想家の文章 20
 (3)文明開化期の読み物 22
 (4)投稿作文雑誌の役割 24
4 子ども観と児童文学 25
 (1)子どもの再発見 25
 (2)『こがね丸』と『小公子』 27
 (3)素材と表現 30
 (4)お伽話から童話へ 32
5 時代の波と児童文学 34
 (1)大正デモクラシーと「赤い鳥」 34
 (2)文壇作家の活躍と宮沢賢治 36
 (3)童話から児童文学へ 38
 (4)現代児童文学の成立と課題 39
     ・
第1部 子どもの再発見
<子供>の発見と児童文学--河原和枝 47
 1 <子ども>によせる解釈図式 47
 2 「少年文学」の成立 51
 3 「お伽話」のコンヴェンション 55
 4 明治国家の<子ども> 60
 5 <子ども>への新しい意味付与 65

ナショナリズムと児童文学--長谷川潮 73
 1 ナショナリズムという視点 73
 2 国家意識の形成 76
 3 「武侠」の変質 79
 4 反ナショナリズムと反戦 84
 5 侵略と攻防の論理 87
 6 ナショナリズムと天皇制 91
 7 ナショナリズムの戦後 96

童心主義と児童文学--横須賀薫 101
 1 「童心」と「童心主義」 101
  (1)用語「童心主義」の成立 101
  (2)童心の系譜 105 
 2 救済としての「童心」--白秋の場合 112
  (1)「童心」の発見 112
  (2)童謡論争における「童心」 115
  (3)魂の救済 119
 3 正義としての「童心」--未明の場合 122
  (1)少年の正義心 122
  (2)「代弁者」としての文学 129
 4 観念性と永遠性--一つのまとめ 132

<宗教児童文学の構図>--神道・仏教・キリスト教系の児童文学--上笙一郎 137
 1 宗教と児童文学 137
 2 神道児童文学 140
 3 キリスト教児童文学 143
 4 仏教児童文学 148
 5 宗教児童文学の到達点 154
 6 宗教児童文学の現在 157
     ・
第2部 展開と諸相
口演童話の方法と思想--上地ちづ子 169
 1 はじめに 169
 2 創始者達の口演効果追求と桃太郎主義 171
 3 師範出身教師たちの話方研究と通俗主義 176
 4 プロレタリア児童文化運動が求めた必要性と芸術性 182
 5 自由芸術思潮と戦争協力 187
 6 口演童話の後退、子育ての語りへ 191

「えい才新誌」の変貌--「学制」の開明から自由民権の閉塞まで--桑原三郎 197
 1 「学制」と開化の熱気 197 
 2 男女同権の論 207
 3 投稿者の年齢と政論と酒、煙草 210
 4 偽頴才の投稿 216
 5 編輯者の交替と青年の登場 218
 6 政府の言論抑圧と新誌の変貌 224

生活綴方の略史と児童文学--亀村五郎 231
 1 戦前の生活綴方 231
 2 戦後生活綴方の復興 237
 3 現今の綴方・作文 240
 4 綴法・作文と児童文学 246
     ・
第3部 現状と未来
ファッションとしての児童文学--川島誠 257

児童文学と性--性別越境の可能性をめぐって--横川寿美子 271
 1 はじめに 271
 2 少女の中の<少年>の行方 274
 3 (性的)身体の性別越境 280
 4 誰が誰のめんどうを見るべきか 284
 5 見る役割交換、する性別越境 291
 6 おわりに 295

児童文学と死--村瀬学 299
 1 二つの死 299
 2 少年探偵団と怪人二十面相 300
 3 『ごんぎつね』と『なめとこ山の熊』 302
 4 『野菊の墓』と『風立ちぬ』 303
 5 『伊豆の踊子』 307
 6 『銀河鉄道の夜』 309
 7 『さいはての島へ』 311
 8 『ちょんまげ手まり歌』 318

二十世紀児童文学の諸相--石澤小枝子 321
 1 はじめに 321
 2 ハッピーエンドの崩壊 323
 3 啓示的世界像を描くファンタジー 330
 4 子ども観の変遷 336
 5 「家族」「教育」「異文化」を描く新しい課題 339
 6 「内なる子ども」を契機として 342
    
    



研究=日本の児童文学3 1995.08.04
児童文学史を問い直す--表現史の視点から 目次

総論
児童文学のことば、児童文学というコミュニケーション--宮川健郎
 1 「児童文学の表現史」というくわだて 11
 2 児童文学のことば 13
 3 児童文学というコミュニケーション 19
 4 「仮装」という概念の再定義 24
     ・
第1部 「表現」から読む、日本児童文学
『こがね丸』の可能性--男色文学としての「少年文学」--小森陽一
 1 『こがね丸』と『三十年目書き直し こがね丸』との間で 35
 2 欲望と禁止の間で 45

未明童話の様式論--『赤い蝋燭と人魚』を読み直す--中村三春
 1 児童文学の漸近原理 55
 2 “子ども”という概念枠 59
 3 <対応=伝達>の暗黙知 61
 4 テクストの地理空間 65
 5 “パラレルワールド”の構造 68
 6 死滅する都市--コミュニタスの論理 72
 7 “マナ”としての「蝋燭」 76
 8 結び--幻想文学としての未明童話 79

白秋童謡への一視点--『とんぼの眼』の位置--中島国彦
 1 「なぜなぜ」という問い 83
 2 「なぜなぜ」の変貌 86
 3 原初的混沌への眼 92
 4 イメージの共時性 97

「虎ちゃん日記」に出発した「おれ」のゆくえ--浜野卓也
 1 その評価、戦前戦後 107
 2 「おれ」の発見 114
 3 「虎ちゃん日記」を超えていく「おれ」 119
 4 「おれ」の到達点としての無感傷性 124

『銀河鉄道の夜』への旅--脇明子
 1 『銀河鉄道の夜』の転生--初期形と最終稿 129
 2 銀河鉄道に乗るまで 133
  (1) 違和感と親しさ 133
  (2) 夜の世界の魅惑 136
  (3) 世界からの遊離 138
 3 銀河鉄道の旅 141
  (1) はじめに 141
  (2) 光と化した物質 144
  (3) 夜汽車の道連れ 147
  (4) 言葉による音楽 152
 4 目覚めと涙 155

南吉と譲治--リアリズム童話を中心に、その対比的考察--原昌
 1 はじめに 161
 2 童話における「物語性」ということ 164
 3 心理描写の手法 167
 4 笑い、ユーモアとペーソス 171
 5 庶民性と小市民性と 175
 6 南吉・譲治にとって童話とは 180

第2部 「表現史」の断続
「表現史」の断続--「童話」の傍流、「児童文学」の伏流--佐藤宗子
 1 「断続」への注目 195
 2 『小公子』--媒介者の源泉 198
 3 『鉄の靴』--「童話」表現の湧出 201
 4 青木茂--作家の渾身、作品の浸透 205
 5 平塚武二--叙事の世界、語りの空間 208
 6 無国籍童話と無何有郷ファンタジー 212
 7 「伝達」の意志と語りの方法 215
 8 水脈の把握へ 218
     ・
第3部 「表現史」の外延
大衆児童文学の新しい風--二上洋一
 1 物語性の構図 223
 2 抒情性の展開 228
 3 戦後の大衆児童文学の諸相 233
 4 少女小説の可能性 238
 5 異次元ファンタジーの魅力 242
 6 再び、物語性の構図 245

<少女小説>を読む--吉屋信子『花物語』と<少女美文>の水脈--中村哲也
 1 『花物語』の美文 249
 2 投稿する<少女>たちの美文世界 255
 3 『花物語』から<ポエム>へ 260

児童文学における「国境」と「越境」--上野瞭
 1 表現は「間仕切り」となりうるか 265
 2 意識の中の「間仕切り」 274
 3 「越境」とは何か 281
    
    



研究=日本の児童文学4
現代児童文学の可能性 目次

総論
現代児童文学の条件--石井直人 11
 1 「幸福な一致」 12
 2 子ども読者--読書のユートピア 19
 3 子ども読者論の変奏 23
  (1) 「タブーの崩壊」以後 23
  (2) 「越境」以後 29
  (3) 「児童の発見」以後 34
 4 楕円原理--児童と文学という二つの中心 40
     ・
第1部 「物語」の発生
伝承の力--浜たかや 51

変容するハナシ--学校の怪談から--常光徹 71
 1 はじめに 71
 2 学校の怪談の特徴 73
 3 ハナシの模様替え 75
  (1) 追いかける黒猫 75
  (2) モナリザの手 78
 4 ある怖い話の変容 82
  (1) 肝だめし 82
  (2) 幽霊滝の伝説 84
  (3) 幽霊滝 88
  (4) 「賭づくをして、我が子の首を切られし事」 90

児童文学における事実性と虚構性--文学の何が人を励ますか--藤田のぼる 95
 1 「励まし」の二つの相について 95
 2 作品の方法意識と読者の意識 111
     ・
第2部 「児童文学」という場所
児童文学と自然--牟田おりえ 123
 1 自然の変遷 124
  (1) 自然支配から理解へ 124
  (2) アイデンティティ形成と自然 130
  (3) 架け橋としての先住民文化 133
  (4) 自然災害 135
  (5) 文明の狂気と自然の正気 139
  (6) 科学の進歩と動物実験 146
 2 自然との共生へ向けて 148

児童文学におけるトポス--本田和子 157
 1 始まりの場所 157
 2 精霊達の棲まいする場所(トピア、ロキ) 158
  (1) 「どこにもない国」--時計と地図の彼方へ 158
  (2) 「生きられる空間」はどこ?--コンクリートの中の宇宙 162
  (3) 第四の方向--ミンコフスキー空間 166
 3 表現の現れる場所(プレイス、トピック、トピカ) 170
  (1) 「童話村」顛末記 170
  (2) 述語的統一と場所の記憶--子どもの存在根拠 174
4 結論のない文章のために 178

語ることへの信頼・その行方を追う--村中李衣 183
 1 語りのパターン分けから 184
 2 松谷みよ子の私小説風文体 186
 3 川島・森・岩瀬の作品文体--読まれることへの懐疑 197
  (1) 川島誠--挑発の文体 198
  (2) 森忠明--自嘲的文体 201
  (3) 岩瀬成子--想定することの放棄 207
 4 語ることへの不安--読むことで物語を支えるということ 209

作品の<出口>へ--一九八〇年代児童文学、その結末をめぐる一考察--奥山恵 215
 1 はじめに--『僕らは海へ』の結末 215
 2 <事件完了>への傾斜 218
 3 <事件完了>への期待 220
 4 <事件完了>というぎまん 226
 5 作品の<出口> 229
 6 『僕らは海へ』の<出口> 235
 7 多様な<出口>へ 239
     ・
第3部 「児童文学」と「読者」のあいだ
児童文学におけるグレードと文体をめぐって--石井光恵 245
 1 はじめに 245
 2 児童文学の独自性--子どもの発達と児童文学の交差点 247
 3 児童文学におけるグレードと表現としての文体の交差点 251
 4 いわゆるグレードふうに作品を追って--個々の作品のグレードと文体の交差点 253
 5 おわりに 262

登場人物への期待--細谷建冶 267
 1 教育主義的期待と理想主義的期待 267
 2 伝統批判と理想主義的期待 272
 3 峠のむこうへの期待 277
 4 昏迷は動き始める 284
 5 反成長の主張=翔べない少年たちの登場 287

児童文学におけるタブー--砂田弘 293
 1 タブーの定義とその領域 293
 2 『子どもと文学』の登場 295
 3 近代的子ども観の定着 297
 4 失われゆく子ども時代 299
 5 ボーダレスと児童文化 301
 6 死の周辺を探る 305
 7 逆境へのさまざまなアプローチ 307
 8 重いタブーとしての「性」 311
 9 タブーをめぐる試行錯誤 314
     ・
第4部 「物語」と「物語」のあいだ
翻訳児童文学の表現--島式子 319
 1 あこがれと使命感 320
 2 新しい文体を生み、そして新しい文学へ 327

物語世界の再生と変容--書きつぎ/書きかえと読みつぎ/読みかえの力学--佐藤宗子 337
 1 物語世界の継承 337
 2 シリーズの成長と変化 340
 3 シリーズの複線化と遍歴 349
 4 ジャンルの形成と循環 356
 5 物語世界と「時間」 361    

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