徳間のゴホン!

第14回
「お父さん、本読んで!」

           
         
         
         
         
         
         
     
 最近、続けざまに「滅多に絵本なんか開かない(=子どもに読んであげない)夫が、夢中になって、○○を子どもに読んであげたんですよ」というお便りをいただきました。
 まずは、『にたものランド』。一見すると、ただの写真絵本。たしかに写真を使った絵本ではあるのです。でも、その写真をよくよく見ると…機関車だと思っていたのはコーヒーポット、観覧車だと思っていたのは、はさみ、そして、車だと思っていたのは女性物の革靴…そうなんです。日常ありふれたものが、この作家にかかると、別な物に変身してしまう。よく分からないって?じゃあ、これを見て下さい。一見すると、ただのテディーベア、でも、よく見ると…。しかも、各ページ百個あまりのグッズを使ってあり、そのグッズの一覧が巻末に。お父さんと子どもが絵本をのぞき込み、似たもの探しに夢中になる、そんな面白い絵本です。一見は百聞にしかず、ぜひ、にたもの探し、してみて下さい。
 おつぎは、『かようびのよる』。夜中、魔法のじゅんたんさながらに蓮の葉っぱにのって、空を飛ぶカエル、カエル、カエル。飛行物体が大好きなお父さんもこの絵本には、度肝を抜かれるようです。自ら買い求めて、知り合いの子どもへのプレゼントにした人も。
 そして、『もっちゃうもっちゃう、もうもっちゃう』。主人公の男の子は今にも、「おしっこもらしそう〜」で、トイレをさがして右往左往。男の子が主人公だから出てくる便器はみんな男性用、しかも普通の便器じゃありません。ちょっと下品?いえいえ、そんなことはありません。だれもが経験したことのある、切実な問題なんです。
 『ピンクのいる山』は、うってかわってアウトドアの絵本。渓流釣りの好きなお父さん、子どもの頃野山でかけまわったお父さん、みんな「自分の中の子どもと、自分の子どものための絵本」として、すっかり夢中になるようです。徳間書店でも、ふだんは絵本に見向きもしない隣の部の編集長さんが、残業していたらこっそり寄ってきて、「ねえ、あの絵本見せてよ」。そしてゆっくりページをめくると、「う〜ん、いいねえ。いいねえ」を連発していました。(Y編集長、買ってね。)
 そして、最後にご紹介するのは、あのジョン・レノンが、ハウスハズバンドをしながら息子のショーンに描いてあげた、『リアル・ラヴ』。「笑いと多くの愛に育まれた絵本」というオノ・ヨーコさんの言葉通りの、あたたかくてユーモア溢れる絵本です。(米田佳代子

『にたものランド』ジョーン・スタイナー作・絵/前沢明枝訳
『かようびのよる』デヴィッド・ウィズナー作・絵/当麻ゆか訳
『もっちゃうもっちゃうもうもっちゃう』土屋富士夫作・絵
『ピンクのいる山』村上康成作・絵
『リアル・ラヴ ショーンのために描いた絵』ジョン・レノン絵/オノ・ヨーコ序文
徳間書店「子どもの本だより」2000年9月/10月 第7巻 39号
テキストファイル化富田真珠子