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2008.02.25

       

【絵本】
『きみがうちにくるまえ前…』(マリベス・ボルツ:文 ディビッド・ウォーカー:絵 木坂涼:訳 あすなろ書房 2007.12 1300円)
 保護施設からもらってきた子犬に「ぼく」は話しかけます。どこからきたの? まえはどんな生活だったの?
 もちろん今、子犬を飼えた「ぼく」はとても幸せで、子犬だってきっと幸せ。でも、その幸せの前に何があったか? 「ぼく」と子犬が出会う前…。
 知らなくても良いと言えばい良いことですが、今、子犬が大好きな「ぼく」にとってやっぱり知りたいことでもあるわけで、
 そして、最後には、やっぱり、どうであれ、今、幸せな「ぼく」と子犬であることが一番大切なんだと、
 そういう風に、わかっていることを、もう一度丁寧にたどっていくから、読み手にも、その幸せが伝わってくるのですね。
 いいなあ。(ひこ)

『今森光彦の たのしい切り紙 森へようこそ』(今森光彦 山と渓谷社 2008.02 1400円)
 切り紙も達人の今森が、また楽しい本を出してくれました。
 当然、切り抜くのは自然の草花や虫たち。細かく、やり方を伝授してくれます。
 ただ切り紙をするのではなく、そこは今森、それを使って、生活をどう豊かにするかまで見せてくれます。
 自然を切り抜いた切り絵が添えられることで、人間が作ったコップもカップもセーターも、自然に溶け込んでいきます。
 ハーブティを飲みたくなりますよ。(ひこ)

『うさぎ座の夜』(安房直子:作 味戸ケイコ:絵 偕成社 2008.01 1400円)
 ていねいにていねいに作られている、安房作品の絵本化、四冊目。
 山の生き物や木々と話すことができる小夜の元に、人形芝居、ウサギ座から招待状が届きました。
 ウサギたちと一緒に観る、指人形のお芝居。でも小夜は、さっきなくしてしまった手袋のことがきになって仕方ありません。
 始まったお芝居、主人公のウサギ人形は、なんと小夜がなくした手袋でできているではありませんか!
 過不足なく描かれた文章に画を付けるのは難しいのですけれど、味戸のそれは、安房の世界を邪魔することなく、でもやっぱり味戸の強い個性は一歩も引かず、一つ一つの画が、なんと勢いのあること。
 ドキドキしますよ。(ひこ)

『氷河ねずみの毛皮』(宮沢賢治:作 木内達朗:絵 偕成社 2008.02 1600円)
 こちらは、宮澤作品の絵本化。冨山房から出ていた物の復刊です。木内の幻想的でありつつ生々しい画が、賢治作品の質感を良く捉えています。良く捉えているよりも、パワーアップしている、が正しいかな。寒い話が、むちゃくちゃ暖かい。
 そうそう今年は子年ですもんね。(ひこ)

『あめだまをたべたライオン』(今江祥智:文 和田誠:絵 フレーベル館 2008.01 1200円)
 五十年ほど前の今江作品の単行本絵本化です。「母の友」では長さんが画を付け、その後、今度は和田が描き、今回はその和田版のハードカバー絵本化です。今江といえば長さんですが、和田との相性も良いですね。ってか、長さんで、和田誠なんて、豪華ですね。今江でしかありえない出来事です。
 初期の今江の幼年物における、伸びやかさがよく伝わってきます。(ひこ)

『なりたいじんじゃ』(矢玉四郎 ポプラ社 2008.01 1200円)
 矢玉ワールドです。「あいうえほん」五巻目。
 お願いするとなんにでもなれる(?)、「成鯛神社」であります。鯛が巫女です、イカが、「いかんぬし」です。色んな動物がお願いに来ます。
 子年ですし、ネズミがキーです。
 それ以上はもういいか。
 たっぷり、アホらしく堪能しましょう。
 素晴らしい。(ひこ)

『モグといたずらぎつね』(ジュディス・カー:作 斎藤倫子:訳 あすなろ書房 2008.01 1400円)
 『モグ』シリーズ最新訳。
 ねこのモグはたまごが大好き。朝も晩も欲しいのに、もらえるのは朝だけ。だから夕食のフードもなかなか食べません。怒ったお父さん。子ども達はモグを甘やかせすぎだ!
 モグはプチ家出を敢行。さてどんなことになりますやら。
 モグはやっぱりモグだから、反省するパタ−ンではもちろんないし、かといってお父さんが気持ちを入れ替えるわけでもなく、それでもみんなが幸せになれますよ。(ひこ)

『たっちゃん まってるよ』(おくもとゆりこ:文 よこみちけいこ:絵 アスラン書房 2008.01 1400円)
 多動って言葉にくくられてしまう子ども、たっちゃんの物語。
 たっちゃんは教室でじっとしていられなくて、校庭に出て色んな物を眺めたりします。おくもとは、そんなたっちゃんをありのままに描いていきますから、たっちゃんもただの子どもの一人なのがよくわかります。そこに「感動」や「優しさ」や「誠意」を持ち込みません。うしろのほうにこっそりと「理解」を忍ばせていますが。
 最後の一行はいらないのでは?
 よこみちの画は、少し感情が入ってしまっています。もっとクールでも良かったのでは?(ひこ)

『ホネホネたんけんたい』(西澤真樹子:監修・解説 大西成明:しゃしん 松田素子:ぶん アリス館 2008.02 1500円)
 色んな生き物を、骨格だけで見せていく写真絵本です。
 欠片ではなく、丸ままで見せられると、その生き物への視点が変わっておもしろいです。
 最初のヘビなんかそうです。筒状のイメージが、コイル状に変わります。きれいですよ、とても。
 解説も必要なので、展示数が少ないのが残念。
 続編を、ぜひ。(ひこ)

『時間の森〜屋久島』(山下大明:しゃしん・ぶん そうえん社 2008.02 1300円)
 無知で恥ずかしいのですが、屋久島にこんなに雪が降るなんて知りませんでした。
 ページを開くといきなり雪が積もり、凍った森の写真です。マイナス二十度にもなるといいます。あわてて、観光協会のサイトを開けて調べてみると、確かにそう。
 鹿児島県だというのが、思い込みを生んでいました。
 山下の写真がいいのは、屋久杉などを畏怖する、お行儀の良い撮影というより、激写っぽく撮っていること。ぐいぐい、ぐいぐい、森に迫っていきます。そこに遠慮なんかはありません。見たい物見せたいこと、伝えたい時間と風景を、どんどん切り取っていってくれています。乱暴というのではありません。愛しさです。
 だから、私も現場にいる気持ちにさせてくれます。
 すごいな〜と感心して、著者紹介を見たら、屋久島在住。それも島で一番寒い宮浦。
 そうか、外側からではなく、内側から撮ってるんだ。(ひこ)

『いまは話したくないの 親が離婚しようとするとき』(ジニー・フランツ・ランソン:作 キャサリン・クンツ・フィニー:絵 上田勢子:訳 大月書店 2007.11 1600円)
『車いすのいねえちゃん 障害のあるきょうだいがいるとき』(ステファン・ボーネン:作 イナ・ハーレマンス:絵 野坂悦子:訳 大月書店 2007.12 1600円)
 「心をケアする絵本」シリーズ二,三巻目。
 自分ではなく家族になにかあったとき、子どもは動揺しますが、それをどうケアしてあげるかがテーマとなっています。
 本人自体は何も問題ないかのようだから、結構見過ごされるのですけれど、そうであるからこそ、彼らはそれを受け止めにくいし、乗り越えにくいのです。
 このシリーズがそうした子どもたちのケアと、そうした子どもたちに対する大人や友達の理解の一助になればいいですね。
 ってか、訳本だけではなくて、日本版が出て欲しいな。
例えば、『いまは話したくないの 親が離婚しようとするとき』の絵は、アメリカではOKかもしれませんが、日本ではキツイ気がします。そんな文化の違いを埋めるためにも。(ひこ)

『おおきくなったら』『プレゼントはなあに?』(きむらゆういち:作 長野ヒデ子 小学館 2008.02 650円)
 「パッチン絵本」と名付けられた仕掛け絵本シリーズ最新作。
 画面の上下が分かれてのばせるようになっていて、隠れていた部分が出てくるだけの、1アイデアなのですが、色んなパターンで作ることはできますね。
 単純なので、あきません。
 へたにいじらない、作り方は、本当に巧いと思います。
 長野の画は、もちろんいつものように、伸びやかに。(ひこ)

『カンガルーママのすてきなポケット』(二宮由紀子:作 あべ弘士:絵 佼成出版社 2007/10 1300円)
 カンガルーママがおひるねから目を覚ましたら、おなかの袋にルルちゃんがいない。たいへんだあ!
 カンガルーママは、おなかの中になぜだか詰め込んでいた、すりこぎ、ビーチクッション、うばぐるま、チェリービスケットなどを引っ張り出して、出会う動物たちにルルちゃんを見なかったか聞くのですが……。
 ちょっぴりシュールな二宮の世界。でも、ママ物は苦手かな。いつもと違って抑え気味。でも、ママのとんでもなさは、充分でています。(ひこ)

『どろんこおおかみと 7ひきのこやぎ』(柴田愛子:分 あおきひろえ:絵 アリス館 2007.11 1400円)
 実践で、いや実践なんていい方ではなくて、現場で子どもと遊んでいるなかから生まれた物語。
 えんちょうせんせのあいこさんと子どもたちが、「おおかみと7ひきのこやぎ」をベースに、どのような発想を広げながら楽しい時間を過ごすかが、ほんとうにその場に参加しているような気分で味わえます。
 おおかみからじぶんたちを守るために、子どもたちが考えるアイデアは突飛な物ではありませんが、そこがいいですよ。自分たちで思いついたことで遊んでいるリアルさがあって。
 あおきひろえの絵が、また臨場感があっていいんですよ、まったく。(ひこ)

『とっきゅうでんしゃのつくりかた』(のぶみ・さく そうえん社 2007.11 1200円)
 思ったままをストレートに表現していく(かのように見せる?)、のぶみの腕のさえを見せる一品。
 別にひねりはありません。
 とっきゅうでんしゃを作ろうと思った少年が、作りながら、ただし、現実的には家の中で本物サイズのとっきゅうでんしゃが出来るわけもなく、作っているつもりで、想像はどんどん、どこまでも広がっていく、その様を、真っ直ぐ真っ直ぐ見せていきます。
 山のようにつまれた段ボールでできた車体、冷蔵庫から頂いてきた食べ物で食堂車、トイレもベッドも持っていっちゃえ!
 車両はやがて家をはみ出して大きくなり……。
 すかっとしますよきっと。(ひこ)

『コロコロ どんぐりみゅーじあむ』(いわさゆうこ アリス館 2007.11 1600円)
 植物図鑑なら、いわささんにまかせなさい。
 日本で見られる二十七種類のどんぐりだそうです。
 あ、意外に少ない?
 あ、どんぐりってそんなにあるんだ。
 どっちにしても、写真とイラストで詳しく解説してくれます。
 最後の折りたたみページでは、どど〜んと全部が勢揃い!(ひこ)

『ごっほん えっへん』(ただもりのりこ:作・絵 岩崎書店 2007.11 1300円)
 『ばけばけ町』シリーズで、その展開をおおいに楽しませてくれている、ただもりのりこの、しりとり絵本です。
 しりとり絵本は、谷川俊太郎や五味太郎や石津ちひろや、色々ありますけれど、これはしりとりにそんなにこだわっているのではなくて、かぜを引いて家にいて、退屈なかのちゃんが大好きなぬいぐるみとしりとりをしながら時間を過ごす。つまり、病気で落ち込んでいる子どもがどう時間を使うかの物語となっています。
 ですから、しりとりそのもののできはさほどではありませんが、子どもの一人遊び風景として読めば、なかなかリアルです。(ひこ)

『いやいやアゴマスク』(こいでなつこ 岩崎書店 2007.11 1300円)
 子どもが、おやに「いやいや」絵本です。
 あごの辺りがマスクをしたように白い、ねこのアゴマスクくんは、食事の後、親にあごをタオルでゴシゴシキレイにされるのが大嫌い。だから家を飛び出して、キツネやワニくんたちと遊ぼうとしますが、彼らもまた、子どもですから、親から「いやいや」なことされていて、家に戻るまでのお話です。
 子どもが子どもであることのいやさを描くパターンとしては、それなりに良くできています。アゴマスクって名前もいいですし。
 ただ、お友達くんたちのネーミングはもっと工夫ができるでしょうし、それぞれの「いやいや」も、もっとそれぞれらしい「いやいや」のした方が良かったのでは? こういう物語はかなりベタにした方がおもしろいのです。
 登場する動物たちの姿や表情はいいですね。道や家は、もう少し個性が欲しいです。
 あと、タイトルロゴも一工夫。(ひこ)

『こねこのネリーとまほうのボール』(エリサ・クレヴェン:作・絵 たがきょうこ:訳 2007.11 1400円)
 こねこのネリーはのらねこで、お腹をすかせています、ある日カラスにもらったボール、願いをかけて、はずませて、それをつかまえられたら願いが叶うと言われ、追いかけるのですが……。
 不安から失望、そして最後は幸せな結末と、まさに願い通りに物語が展開していって、気持ちよくページを閉じることが出来ます。
 一歩間違えば、ただの凡庸な物語となるのですけれど、ボールを追いかけていくことで表される期待感や、雨で消えていく(何がかは読んでね)喪失感などが平板さから救い出します。
 画の表情の豊かさも良いですね。(ひこ)

『ママブタさん、いしになる!』(アナイス・ヴォージュラード:作・絵 石津ちひろ:訳 徳間書店 2008.02 1100円)
 パパブタさんに続いて、ママブタさんです。
 七十三匹のコブタたちは今日も大騒ぎ。怒ったママブタさんは、石のように固まってしまいました。
 コブタたち、最初はそれでもわいわい騒いでいましたが、いっこうに石化から回復してくれないママブタに、さて困った。
 本当に七十三匹のコブタを個性的に描きながら展開してゆきますから、それは賑やかなこと!!(ひこ)

『おとうとのおっぱい』(宮西達也 教育画劇 2007.11 850円)
 おとうとができて、ママのおっぱいはおとうとに占拠されてしまってます。
 仕方ないのはわかっているけれど……。
 この辺りの、お兄ちゃん、お姉ちゃんの気持ちが伝わります。
 一カ所でいいから、おっぱいではなくおかあさんが描いてあったら、もっと良かったです。(ひこ)

『まぜまぜ ぷーちゃん』(たるいし・まこ ポプラ社 2007.11 800円)
 今回、ぷーちゃんは、おやつにヨーグルトを食べるわけですがあ、どうぶつたちがやってきて、あれ混ぜろ、これ混ぜろで…、もちろんぷーちゃんはみんな混ぜるわけで、もうぐちゃぐちゃで、でも、おいしい!
 赤ちゃん心をくすぐりますよ、これ。
 私は食べたくないが。(ひこ)

『それいけ! おもちゃだいさくせん』(土屋富士夫:作・絵 徳間書店 2008.02 1400円)
 土屋の描く男の子は本当に良く動くのですが、今作も動き回ります。
 しょうちゃんはジグソーパズルに夢中、なのに、最後の一つのピースがなくなってしまう。捜すしょうちゃんの姿を描いていきます。っても、どんどん想像は膨らんで、おもちゃたちの助けを借りて世界中を飛び回る。
 もちろんそれは実際に飛び回っているわけではなくて、しょうちゃんの想像がそうなっているのですが、とても自然に流れていくので、読者は一緒について行くことの心地よさをたっぷりと味わえます。(ひこ)

『ニャンニャン シティマラソン』(谷川晃一 教育画劇 2008.02 1000円)
 まあ、ねこたちのマラソンを描いた絵本です。
 っても、なんだかよくわからないとは思うのですが、そうなんです。
 画面中ねこだらけ、町中を走る走る。
 絵本らしく、画面のちょこっとしたところに、遊び絵が置いてあります。
 犬に追いかけられて、犬ねこバター(「サンボ」ね)みたいな絵もあります。
 でも、やっぱり、ただただ走るだけ。
 だから妙におかしいの。意味を付加していないおかしさです。(ひこ)

『シンデレラ』(ぽっぷ:え はやのみちよ:ぶん ポプラ社 2008.01 1300円)
 ぽっぷによる、童話・昔話の絵本化シリーズ四作目です。これまで、アリス、赤ずきん、おやゆびひめときましたが、ここまでは「少女」なんですが、シンデレラは少女ではありませんので、ぽっぷの少女絵ではチト苦しいです。子どもが夜の舞踏会に行くのはちょっとね。「もえ」だから、これでいいのかもしれませんが。「白雪姫」や「眠り姫」も苦しいなあ。(ひこ)

『森のイスくん』(石井聖岳:作 ゴブリン書房 2008.01 1400円)
 森に中にポツンとイスくん。動物たちはかれが何故そこにいるかわかりませんが、興味津々。一緒に遊ぼうと、色々試みます。
 イスくんがそこにいる事情をリアルに想像しても良し、シュールに置いても良し。
 イスをモチーフにした作品はたくさんあるでしょう。それはたぶん人間にとってイスが「居心地が良い」ものであると同時に「居心地が悪い」ものでもあるからでしょう。
 この作品もまた、イスをモチーフにした忘れられない一品となりました。
 子ども読者にとってはワクワクする設定でしょうね。(ひこ)

『のんのんばあ おばけどろぼう』(水木しげる 文研出版 2007.08 1400円)
 七十六年作品の復刻です。
 心優しいが、強力な魔力を持っているのんのんばあの元に、人魚の干肉を奪おうと、ヨーロッパから悪魔と魔女がやってきます。
 って、設定が、もうおもしろいですねえ。
 極めて日本昔話的な世界で、ヨーロッパの悪魔たちは戦えるのか?
 はい、もちろん負けるのです。
 妖怪たっぷりで、とても楽しいのですが、絵本とコミックと自由に行き来しながらの描写がすてき。(ひこ)

『まいごの はちのぼうや』(たんじあきこ ほるぷ出版 2007.10 1400円)
 ほるぷのペーパークラフト絵本です。このシリーズ、本当に楽しいよ。図書
館は辛いが、プレゼントにはいいよ。いろんなおうちを作るのです。
 今作は、まいごになったはちくんが巣にもどるまでの、ドタバタ大騒ぎ物語
があって、これはこれで、出来が良いのです。考えてみればこのシリーズ前半
の絵本部分もおもしろいから、後半の工作をしたくなるのですね。
 今作では、蜂の巣を作ります。
 作ってください。(ひこ)

『ロビンソン一家のゆかいな一日』(ウイリアム・ジョイス:作 宮坂宏美:訳 あすなろ書房 2007.10 1600円)
 お正月に公開された『ルイスと未来泥棒』の原作本です。
 もう、ロビンソン一家の面々のおかしさ具合といったら! 書いてしまうとおもしろくないでしょうから書きませんが、大人なんて、ちゃんと大人をまったくやっていないし、ヘンな生き物は平気ででてくるし、でも、それをヘンだと言わずに描いているので、そこがヘンなわけです。(ひこ)

『おじいちゃんのカブづくり』(つちだよしはる そうえん社 2008.02 1200円)
 珍しい品種の藤沢かぶ。焼き畑で作ります。
 ほのかのおじいちゃんとおばあちゃんは、この品種を守るため、作り続けています。
この絵本は、その姿をほのかの目を通して描いていきます。
 藤沢かぶ、食べたくなりますよ。

『ひとりぼっち?』(フィリップ・ヴェヒター:作・絵 アーサー・ビナード:訳徳間書店 2007.11 1300円)
 小型絵本だから幼年物かというとそうでもなく、むしろ大人向けです。
 主人公はクマ。「ぼく」「ぼくは こんな じぶんが すき」「じぶんの いきかたで いきているのが すき」と始まりますから。
 そうして、絵本は、彼の心地よい生き方、自己肯定を描いていきます。
 でも、都会の中で、孤独を感じた「ぼく」が向かった先は?(ひこ)

『ねずみくん おおきくなったら なにになる?』(なかえよしお:作 上野紀子:絵 ポプラ社 2007.11 1000円)
 シリーズ二十四作目。
 今回は、色んな動物に、将来のお仕事を聞いていきます。ライオンさんは散髪屋さん、ゾウさんは消防士、でねずみくんは?
 ぼくは、歯がじまんなだけだしな〜。
 みんなは、ねずみくんは小さすぎて何も出来ないんじゃあ? とからかいます。
 で、歯医者さん希望になるというのは、チト単純な気もしますが、ポイントはそこにあるのではなく、みんなが怖がる歯医者さんになるというところですね。(ひこ)

『しずくちゃん ミニしかけえほん1 なぞなぞ12かげつ』(ぎぼりつこ:絵 わだことみ:原案 岩崎書店 2007.12 570円)
 五センチ四方ほどのちいさなちいさな、しかけ絵本です。人気の「しずくちゃん」キャラで繰り広げられるなぞなぞは、たわいもないものですが、小さな本を持つこと自体が楽しいですね。
 これは子どもはコレクションしたくなりますよ。(ひこ)

『トリケラトプスとギガノトサウルス 南海大決戦の巻』(黒川みつひろ:作・絵 小峰書店 2007.06 1300円)
 「たたかう恐竜たち」シリーズです。今回は、新大陸で平和に過ごしていたトリケラトプスたちですが、海から凶暴な肉食恐竜ギガノトサウルスが襲ってきて、大変なこととなります。
 副題からもわかるように、もうなんだか東宝のかつての怪獣物みたいなノリです。
 でも、最後にはちゃんと化石を元にした解説があります。
 やっぱり、恐竜って、ドキドキしてしまうんですね。(ひこ)

『はこ は はこ?』(アントワネット・ポーティス:作 中川ひろたか:訳 光村教育図書 2007.10 1400円)
 段ボール箱を使って、色んな想像をして遊んでいる子ウサギちゃんのお話です。
 黒で表された子ウサギと箱が現実で、赤い線が空想です。
 このアイデアはいいですね。「空想」が見えやすいし、楽しいのがわかります。
 「子ども」と「想像」の関係を描いたメタ絵本としても出来が良い!
 セリフは、語り手の問いかけが段ボール色のページで、子ウサギちゃんの返事が赤いページなので、判読できますが、言葉がちょっとわかりづらいです。邦題も含めて、もっとシンプルでいいと思いますが。
 そこがちょっと残念。(ひこ)

『グレート・ワンダーシップへ ようこそ!』(五味太郎 偕成社 2007.11 700円)
 ミニ絵本です。
 少年が「あれ、なんのふね?」と聞いて、ふねの見学に。
 ふねの中は操舵室はもちろん、研究所、図書館、農場、動物園、果ては鉄道も山もあるんです。
 ほんまかいな?
 いいんですよ、五味ワールド。
 画面、画面にちょいとお遊びも。
 ところで、これには、ビッグブックもあるようで、こっちは三倍サイズで、お値段も10290円(税込み)となっております。それもまた、五味式ですね。(ひこ)

『あっちとこっち』(やまなかくにお ポプラ社 2007.06 1200円)
 画面の上と下がまるで鏡のようになっている仕掛け絵本です。でも、上と下ではちょっとちがう。
 それは最後まで読んで行くとわかってきます。
 1アイデアですが、いいセンスですよ、この作家。(ひこ)

『スノーグース』(ポール・ギャリコ:作 アンジェラ・バレット:絵 片岡しのぶ:訳 あすなろ書房 2007.09 1500円)
 美しい傑作を、絵本に仕立て上げるのは勇気のいる仕事だと思いますが、これは、良いファイトをし、まるで最初からアンジェラ・バレットの絵が添えられていたかのようです。
 表紙でまず私たちは、これから始まる物語にときめくでしょう。
 物語と画は、本当に最初からそこに絵が必要であったかのように寄り添っています。
 アンジェラ・バレットが、この作品に、いかに敬意を表しているかがわかります。
 アンジェラ・バレットは、やはりすごい。(ひこ)

『ヒロシマのピアノ』(指田和子:文 坪谷令子:絵 文研出版 2007.07 1600円)
 最近良く知られるようになった、被爆ピアノの話です。
 ピアニストを目指す少女が愛用していたピアノ。しかし戦争は激しくなり、やがてヒロシマを原爆が襲う。
 なんとか生き残ったピアノもあちこち壊れていて、時は過ぎ、ある調律師がそれを修理し、原爆を伝えるべく、コンサートを開きます。
 被爆ピアノによる演奏曲が入ったCD付きの絵本です。(ひこ)

【創作】
『ダイドーと父ちゃん』ジョーン・エイキン作 こだまともこ訳 冨山房 2008年1月

 奔放な想像力が生み出す奇想天外なファンタジーで読者を魅了したエイキンが、四年前に惜しまれつつ世を去ったのは記憶に新しいが、彼女が最後まで書いていたのが、この「ダイドーの冒険」シリーズだ。今回の『ダイドーと父ちゃん』に先立つ、『ウィロビー・チェースのオオカミ』『バターシー城の悪者たち』『ナンタケットの夜鳥』『ぬすまれた湖』『かっこうの木』はすでに邦訳されているので、ご存知の方も多いかもしれない。このあとさらに『イス』『ぞくぞく街道』『リンボ・ハウス』『真冬のナイチンゲール』と続き、『クラッタリングショウズの魔女』でシリーズは幕を閉じるという【注:すべて仮題。訳者あとがきより】。
 舞台は、19世紀のイギリスのパラレルワールド。現実の世界と平行して存在するパラレルワールドは、ファンタジーやSFではお馴染みの設定だが、エイキンの描くパラレルワールドは、ウィリアム四世の代わりにジェームズ三世という架空の王が治め、実際は1994年に開通している英仏海峡トンネルがすでに完成しているということ以外、当時のイギリスとの違いはほとんどない。そのため、歴史小説の雰囲気を漂わせながら、史実にはない事件や現実には起こり得ない出来事を違和感なく物語世界に持ち込むことに成功している。
 
ジェームズ三世がこの世を去り、新しくリチャード四世が即位した。しかし、ハノーバー党は自分たちの息のかかったジョージ王子を即位させるという企みをあきらめてはいない。
十代の少女に成長したダイドーは、かつて力を合わせてハノーバー党の陰謀を阻止した幼馴染のサイモンと再会するが、どこからともなく現れた父親のトワイト氏に連れ去られてしまう。トワイト氏はハノーバー党の一員で、またもや何か悪事を企んでいるらしい。親玉は、ハノーバー大使で辺境伯と呼ばれているアイゼングリムだ。しかし、彼らが王位につけようとしていたジョージ王子は病死してしまった。つまり、王位を手に入れることはできないはずだ。辺境伯は何を企んでいるのだろう?
トワイト氏、すなわちダイドーの「父ちゃん」は、ダイドーを女友だちのブラッドヴェセルさんの家へ連れて行く。そこで、辺境伯に頼まれたある仕事をしろと言うのだ。どうやら、リチャード四世に実際会ったことのあるダイドーにしかできない仕事で、ある人物の教育係をするらしい。そして翌日、その人物がブラッドヴェセルさんの家へやってきた。顔中、包帯でぐるぐる巻きにされている。そして、その包帯を取ると……。

希代のストーリーテラー、エイキンが語る物語は、まさに波乱万丈で、独特のアイディアに溢れ、読者をぐいぐいと引き込む。だが、今回の『ダイドーと父ちゃん』で何よりも深い印象を残すのは、「父ちゃん」その人だろう。ハノーバー党の悪人で、良心のかけらもなく、うそばかりつき、教養もなければ、優しさも、知性も、そして娘に対する深い愛情もない。だが、そんな彼が、だれよりも美しく気高い音楽を作り出すのだ。実際、父ちゃんの生み出す音楽は病を癒す力すら持ち、生と権力に固執する辺境伯を生きながらえさせているのも彼の音楽だ。何度も父ちゃんに裏切られ続けているダイドーすら、父ちゃんの音楽が始まるとうっとりと聴き惚れてしまう。そして、どうしてあんなにひどい父ちゃんから(なにしろ友だちのブラッドヴェセルさんや罪のない子どもたちが焼死しかけているのを見捨てるほどなのだ)、あれほどまでにすばらしい音楽が生まれるのかと、思い悩むのだ。
ダイドーの悩みは、そのまま読者の悩みでもある。この、最上の音楽を生む最低の男をどう判断すればいいのか。ダイドーと同じく、今度こそ改心してくれるのではないかという読者の期待は、何度も裏切られる。その末に、エイキンが用意した結末とは? 読者はきっといつまでも彼の人生に思いをはせ続けるだろう。
ユニークな設定や楽しいアイディアに目を奪われがちだが、エイキンのファンタジーにはどこか切なさやほろ苦さが伴う。面白いけれど、読むそばからどんどん忘れてしまうような作品が多い中で、人生をより深い視点から鋭く見据えているエイキンの作品はいつまでも心に残る。続編が楽しみだ。(三辺)


『シャーロック・ホームズ外伝 カラス同盟事件簿』アレックス・シモンズ ビル・マッケイ著 片岡しのぶ訳 あすなろ書房 2008年2月

 いわずと知れた文豪コナン・ドイルの生んだ名探偵シャーロック・ホームズ。この世界一有名な探偵の物語は多くの読者を魅了し、数々のパロディや二次創作物(別の作家による続編や番外編など)を生み出してきたことでも知られるが、ホームズのアシスタントをしていたロンドン浮浪児たちの集団「ベーカー街不正規隊(Baker Street Irregulars)」を主人公にした作品もまた数多く書かれており、その人気の高さを感じる。古くはロバート・ニューマンの『ホームズ少年探偵団』などがよく知られているが、最近になって立て続けに二作品が出版された。本書と、『ベイカー少年探偵団1 消えた名探偵』(アンソニー・リード著 池央耿訳 評論社)だ。この二冊は、ヴィクトリア女王の即位記念祝典が舞台になること、ホームズが誘拐されること、武器にダイナマイトが使われることなど、不思議なほど共通点が多い。

 ホームズに「スコットランドヤード(ロンドン警視庁)の警官一ダースより有能だ」と言わしめたベーカー街不正規隊。しかし、メンバーのティム少年が謎の死を遂げ、そのとき一緒にいたリーダーのウィギンズは責任を問われて、隊は解散になってしまう。
ティムの弟のドゥーリーは、兄の死の真相を突き止めようと悪人たちのたまり場へ行き、偶然、誘拐現場を目撃する。犯人たちが去ったあとには、ホームズがよくかぶっていた鹿射ち帽が落ちていた。
 ホームズの家に行くと、ホームズは何の連絡もなく一週間も留守にしているという。ドゥーリーはホームズが誘拐されたにちがいないと主張するが、ティムの死が重くのしかかるウィギンズは、事件に関わる気になれない。だが、ドゥーリーへの負い目もあり、街で知り合った黒人の少年オーウェンズと、父の死でロンドンで貧乏暮らしを強いられている少女ジェニーと共にしぶしぶホームズ捜索に乗り出す。その裏には、大きな組織の関わる陰謀が隠されていた……。

 プロットがよく似ている二冊が同時期に出たことは非常に興味深いが、作品の持つ雰囲気やテーマはまったく違う。『消えた名探偵』が、謎解きを中心とした少年少女たちの活躍を描く冒険シリーズ物であるのに対し、本書『カラス同盟事件簿』は当時のイギリスの帝国主義政策を背景に人種問題や階級の問題などを織り込み、黒人でエジプトで戦死した父を持つオーウェンズや、文字が読めないウィギンズら(裕福な暮らしをしていたジェニーは文字が読める)を登場させ、政権交代を望む「過激派」が植民地の民族主義者たちの不満の受け皿になる様子を描く。但し、百年以上前に生み出された人物であるホームズは当然、体制側(=ヴィクトリア女王側)になるわけで、思わぬところで二次創作物のはらむ問題を垣間見せている。
とはいえ、双方とも、オリジナルのドイルの作品をよく研究し、当時の歴史的背景を効果的に用いて、スリルのある冒険物に仕立てているという点は同じだ。

 以前、『キキ・ストライクと謎の地下都市』(キルステン・ミラー著 理論社)というミステリーを訳したとき、作者が、子どものころシャーロック・ホームズの大ファンだったから、自分の作品に出てくる女の子六人組を「イレギュラーズ」と名づけたと言っていたのが印象的だった。イレギュラーズことベーカー街不正規隊は、オリジナルの物語では『緋色の研究』『四つの署名』で活躍する程度で、そんなに頻繁に登場するわけではない。それでも、ロンドンの街を自由に闊歩する浮浪児たちは、私を含め、多くの子ども読者の心を捉えた。一度でも、シャーロック・ホームズ・シリーズに夢中になったことのある読者なら、ぜひ上記に紹介した作品を手にとってみてほしい。ホームズのイメージが原作と変わらないとか、もっとワトソン博士にも登場してほしいなどと、自由気ままに思い巡らすのも、二次創作物ならではの楽しみだと思う。(三辺)

『スパイ・ガール4破壊者を止めろ』(クリスティーヌ・ハリス:作 前沢明枝:訳 岩崎書店 2008.01 800円)
 政府組織によって脳内にチップを埋め込まれ天才となった改造人間、少女ジェーシーの物語もいよいよ最終巻です。
 今回は、炭疽菌をばらまくという事件(実際は疑似でしたが)があって、その犯人を捜すという指令ですが、そうした事件解決も大事ですけれど、やっぱり大きいのは、ジェイの置かれた立場と、それに怒り、悩みする彼女の姿です。
 脳内チップの管理のため、彼女は組織を離れることはできません。それはわかっています。だから指令は受け、仕事もこなしますが、だからといって組織を愛しているわけではありません。そこから逃げ出すことは出来ない子どもです。組織の大人達は、ジェイが天才であることと、子どもだからスパイに向いている(警戒されない)ことにしか興味を示しません。裏切りもあるし。
 じゃあキツイ話かといえば、キツイことはキツイですが、しっかり楽しい、ジェイがかっこいいエンタメにも仕上がっています。
 社会で自由に生きられないって、「子ども」のカリカチュアでもあります。(ひこ)

『アイドロン1 秘密の入り口』(ジェーン・ジョンソン:作 神戸万知:訳 佐野月美:絵 フレーベル館 2007.11 1500円)
 十二歳のベンが今欲しいのはモンゴルケンカウオ。ペット屋ドッドの店で売っている。
 お小遣いを貯めて、やっと買いに出かけたベンだけど、ゲージに中にいたネコに声をかけられる。ネコは、あの魚はインチキだという。そして自分を買えと。そういえば、確かにドッドは怪しい感じ。
 何故か売りたがらないドットから何とかネコを買ったベン。それはとてつもない冒険の始まり。
 病弱の母親はどうやら別世界(魔法が存在する世界)の女王だったようで……。
 貴種であり、叔父一家にいじめられ、別世界と、ハリー・ポッター的ファンタジーですが、ハリーほどベタな小物は出てこず、ライラシリーズのような濃密さもないので、気軽に楽しめる物語タイプですね。
 一巻目はベンの活躍で終わりますが、これから姉妹も重要なカギを握っているようなので、どう展開するか楽しみです。(ひこ)

『氷石』(久保田香里:作 飯野和好:画 くもん出版 2008.02 1500円)
 天平九年の平城京が舞台の、日常物語です。
 そう、歴史ファンタジーや歴史冒険小説にしなくて、この時代の少年を描いた作者の目線が、とてもいいです。
 都には、疫病が蔓延し、千広の母親も亡くなってしまう。父親は遣唐使として大陸に渡ったきり帰ってこず、いくら学問が好きだからって…、千弘は父へのわだかまりを処理できません。
 叔父の家に居づらくて千弘は一人、河原の石を疫病に効くと偽って売り、毎日をしのいでいます。そんな折、彼は屋敷勤めの少女宿奈と出会い、心惹かれるのですが…。
 時代を史書ではなく、木簡から見て描いた力作です。(ひこ)

『リジーとひみつのティーパーティ』(ジャクリーン・ウィルソン:作 ニック・シャラット:画 尾高薫:訳 理論社 2008.01 560円)
 リジーには新しい家族が出来たんだけど、すごく不満。だって、ママはそれで幸せかも知れないけれど、前も新しい父親はヤな奴で、ママは別れてくれたけど、だから今でも、新しい家族なんて欲しくない。
 ましてや、新しい兄弟のひいおばあちゃんに、今度会いに行くことになるなんて最悪。
 ところが、このおばあちゃん、人形をコレクションしていて、ものすごい数なの。リジーも人形が大好きだから、このちょっと怖いひいおばあちゃんでも、なんとか仲良くなりたい。
 という風に、ウィルソンはステップファミリーに不満を持つリジーの目線を巧みにずらしていき、人を好きになるのは、その人の魅力にあるんだよってこと、そしてそれに魅了されることが幸せなんだよってことを描いていきます。(ひこ)

『リトル・レトロ・トラム』(天沼春樹:作 北見葉胡:絵 理論社 2007.12 1500円)
 広場、時計塔、路面電車。まるでヨーロッパの旧市街のような雰囲気の場所で物語は始まります。
 五時二十七分。時計の針が重なって、やってきた路面電車は、レトロ・トラム。ヨーコさんを載せて走りますが、それは以前ヨーコさんが書いた物語を同じです。
 こうして春分の日から、夏至、秋分、冬至とヨーコさんの不思議体験が語られていきます。
 出会った少女は誰?
 時間が交差し、メビウスの輪のようになり……。
 北見の画とピタリの物語。(ひこ)

『ガッチャ!』(ジョーダン・ソーネンブリック:作 池内恵:訳 主婦の友社)
 親の離婚騒ぎでいらついていた高校3年生のアレックスは、お酒を飲んで車を運転し、事故を起こしてしまいます。裁判所から奉仕活動を命じられ、老人ホームで暮らすソロモンの世話をすることになるのですが、この老人、一筋縄ではいかない。いたずらはするし、キツイ皮肉は毎度のこと。アレックスは奉仕内容の変更を判事に願いますが、返事はノー。
 不満たらたらのアレックスですが、ソロモンが昔、プロのジャズギタリストだったことを知り、教えを請うことに。
 若者にこびないけれど、なめてもいないソロモンが実にいい。ちゃんと扱われるから、アレックスだって心を開きソロモンと向き合っていきます。そうしたら彼から吸収することが一杯あるのがわかってくる。ソロモンも、アレックスのおかげでだんだん心が柔らかくなっていく。
 異世代は、棲み分けるのではなく、積極的に付き合った方が、お互いにとっていいのがわかりますよ。(読売新聞)