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【資料】 『先生のための百科事典ノート』(赤木かん子 ポプラ社) 2012年度の小中教科書に百科事典が載ったことを受け、百科事典の活用法をどのようにして子どもに伝えるかを、丁寧に解説しています。 いつものように著者は、子どもの顔が見える位置から書いていますので役立ちますよ。 先生のためとありますが、親も使えます。 『プリキュア シンドローム!〈プリキュア5〉の魂を生んだ25人』(加藤レイズナ 幻冬舎) 対象年齢(3〜7歳)占有視聴率60〜70%を占める人気アニメの制作者、プロデューサーから作曲家、声優までインタビューした労作です。 「男 らしい」「女の子らしい」を出来るだけ排除(子どもに性差意識を植え付けたくない)、彼女たちを助けるヒーローは登場させない、下着は見せない、主人公たちがけんかをした場合簡単に仲直りをさせないで 納得するまでを描く、ダイエット願望は示さないなど、子ども番組を作る大人の矜恃が語られていきます。 おそらくそれが、人気を支えています。 もちろん、作品は玩具販促の意味もあります(この場合はバンダイ)から、スポンサーが売りたい玩具と、制作者の思いとのぶつかりも生じます。特にバンダイ社 員でありつつ、番組の制作を担当している存在にとっては、常に相反する想いがあるわけで大変です。その辺りも読みどころ。 聞き出していく加藤は、YA男子でありながらプリキュアに惹かれてしまった人です。そんな自分を大丈夫かと怪しみつつ、情熱に駆られて自分より大人の制作者たちにぶつかっていく姿はYA小説のようです。 絵本大好きの大人は山ほど存在するのですから、女の子アニメ大好きYAがいてもいい。そう思えないのは、アニメへの偏見です。 マンガと違って、まだまだ認められていないテレビアニメの資料はまとめられることが少ないのですが、この本は研究のための一次資料としても使えるでしょう。そうした意味でも、大切な一冊です。 【児童文学】 『ジェンナ』(メアリ・E・ピアソン:作 三辺律子:訳 小学館) ジェンナは目覚める。ほとんどの記憶がないが、どうやら事故のせいらしい。両親は腫れ物に触るようで、祖母は連れない。この土地もなじみがないらしい。何故に引っ越してきたのだろう? この落ち着きのなさ、不安定さはどうだ。 ジェンナは秘密を探ろうとし、そこに明らかになってくるものは? 近未来を舞台にした切ないアイデンティティ物語。ねたを明かせないのがつらいが、『アーノルドのはげしい夏』の延長線上にある現代的なものと言っておきましょう。 『雨上がりのメデジン』(アルフレッド・ゴメス=セルダ:作 宇野和美:訳 すずき出版) 元植民地であるコロンビアの貧しい家の子どもたちを描くスペイン作品。 カミーロとアンドレスは学校にも行かず、いつも二人で時間を過ごしています。カミーロの父親は仕事もなく、妻子に暴力をふるい、毎日酒浸りです。酒を持っていかないとなぐられるのでカミーロは盗みを厭いません。町に出来た新しい図書館。二人には全く無用の長物なのですが、本を盗みに入ります。2度盗み、酒屋で酒と替えるカミーロ。アンドレスはそんなカミーロが心配でたまりません。図書館に通っている元クラスメイトが教えてくれます。図書館の本は盗めないはずだ。だって出口で警報がなる、と。では何故二度も失敗しなかったのか? アンドレスが留めるのもきかずカミーロは3度目の盗みを働くのですが・・・。 貧しさの風景と「物語」の力について語っています。 『ルンピ・ルンピ ぼくのともだちドラゴン たいせつなカーペットさがしの巻』(シルヴィア・ロンカーリア:文 ロベルト・ルチアーニ:絵 佐藤まどか:訳 集英社) まず、主人公ジャンピの友だちが、「空想(のはず)の青いドラゴン」って発想がいいです。 子どもは想像力が豊かだとかそんな話ではなくて、空想を現実の側にちゃんと従えているわけですから。 この話は、ジャンピが親に叱られそうな失敗をして、それをどう解決しようかってところで展開しますが、彼の不安が落ち着きに変わっていくのは空想の力です。それは何も子どもだけの特権ではありませんね。 児童文学の最初の最初辺りの、こうした物語が一杯出て欲しいといつも思っています。 『盗まれたおとぎ話』(イアン・ベック:作・絵 松岡ハリス佑子:訳 静山社) トムの家族は、おとぎ話の国の側に住んでいます。トムの上に6人の兄弟がいて彼らはおとぎ工房から与えられた役割に従っておとぎの国に冒険に出かけます。そう、彼らはおとぎ話の主人公なのです。今回与えられたのは、私たちがよく知っている「白雪姫」や「眠り姫」、「シンデレラ」などの王子さまの役目。ところが、兄弟たちは行方不明に。そこで、まだ子どものトムが様子を見に冒険の旅へ。そこで明らかになることは・・・。 兄弟話なので、どうしても男目線になる点は気になりますが、メタフィクションでもある設定がシンプルに描けているので、こうしたタイプの物語の面白さを知るには良いですね。 プレイステーションゲームの『ボクと魔王』(SCE 2001)もプレイされると、より楽しめますよ。 『二年間の休暇』(ジュール・ヴェルヌ:作 私市保彦:訳 岩波少年文庫) 『蠅の王』や『機動戦士ガンダム』にもインスピレーションを与えた傑作冒険物語が新訳の完訳で登場! 子どもに本を手渡すお仕事の方にとっては基礎知識の一冊でしょうね。 『愛の一家』(アグネス・ザッパー:作 遠山明子:訳 福音館文庫) ドイツ家庭小説の古典が、新訳で甦りました。20世紀初頭、ドイツが激動の中に落ちていく前、平和な時代の家族を描いています。 今の時代を確認するためにも一読を。 【絵本】 『つぼつくりのデイブ』(レイバン・キャリック・ヒル:文 ブライアン・コリアー:絵 さくまゆみこ:訳 光村教育図書) デイブの存在を、この絵本で初めて知りました。200年ほど前に壺作りをしていた奴隷デイブ。彼の壺は質が高く今はアートとしても高い評価を得ているようですが、その壺に書かれた彼の言葉もまた、一人の奴隷の声として重要なのです。 展覧会しないかなあ。 ブライアン・コリアーのコラージュはやはり素晴らしい。違う素材や画を組み合わせるのではなく、水彩画を切り、組み合わせて、深みを加え、メッセージを埋め込む。画面構成もいいですねえ。 『アスペルガーの心』(フワリ:作・絵 偕成社) 全2巻。 「わたしもパズルのひとかけら」は小学校三年生でアスペルガー症候群の本人告知を受けたフワリが描いた絵本を元にした作品。自分の特徴を伝えています。 「パニックダイジテン」はもう少し大きくなって、パニックの症状を理解してもらうための作品。 アスペルガー症候群の子どもが書いた本はこれまでも翻訳本は出ていますが、こちらは日本の子どもの日本の言葉で書かれていますから、より理解しやすいでしょう。 相手を理解しないで判断するのは、もっともコミュニケーションを阻害することですから、学校や図書館や家で、ぜひ子どもたちにこの二冊を届けて欲しいです。 『こころの家』(キム・ヒギョン:文 イヴォナ・フミエレフスカ:絵 かみやにじ:訳 岩波書店) 「こころ」とは? 「こころ」の動きって? をキムの詩が様々な角度から光を当てて伝えて行きます。それをイヴォナが絵のイメージとして落とし込んでいきます。 その緊張感や緊密感、空間の閉じたり開いたりする様の見事なこと。 といっても大人絵本ってわけでもなく、このぞわぞわ感は子どもにもきっと繋がっていきます。「こころ」を考えたくなります。 素晴らしい! 『商人とオウム ペルシャのおはなし』(ミーナ・ジャバアービン:文 ブルース・ハワットリー:絵 青山南:訳 光村教育図書) とても愉快な、オウムの知恵のお話です。 商人はオウムを飼っていて、そのおしゃべりがお客さんに人気で店は大繁盛。 オウムはかごを出て自由になりたいのですが、叶いません、良いかごを用意して商人はオウムにいかにしあわせかを説いてかかるしまつです。 商人がインドへ買い付けに行きます。そこでオウムは野生の中で暮らす仲間たちにメッセージを伝えるように商人に頼みます。自分は自然の中で生きたいと。 商人はインドで約束通り、野生にオウムにメッセージを告げます。すると・・・。 見事オウムの知恵の勝ち! 十三世紀に書かれた詩を元にしています。 ブルース・ハワットリーの絵がまた、なんともとぼけていていいですよ。 『ミアはおおきなものがすき!』(カトリーン・シェーラー:作 関口裕昭:訳 光村教育図書) タイトル通り、ミアはなんでも大きい物が好きです。大きいアイスクリーム(わかるわあ)とかね。そこでミアは考えた。植物は土に埋めれば大きくなる。だから大きくしたい物をみんな土に埋めることにしよう! この発想の流れがいいなあ。弟まで埋めようとするのは、ちょっと待て。 もちろんそれは無理なのですが、そのあとのミアの決心が素晴らしいなあ。 カトリーン・シェーラーの表情豊かな絵をお楽しみください。 一緒に仕事がしたいあこがれの一人です。 『ねないこ せかいチャンピオン』(ショーン・テイラー:作 ジミー・リャオ:絵 木坂涼:訳 すずき出版) 夜は、眠くなるまで寝たくない。だよね、やっぱり。 もう寝る時間だよと言われたステラ。おやおや素直に自分の部屋に。でもね、寝ないと主張するのがカエルとネズミとブタさんのぬいぐるみ。早く寝なさいとステラは言うけれど、なかなか眠らないで素敵な空想世界で遊ぶの。 もちろんこれはステラの想いが投影されているのですが、こうした扱い方というか描き方って、巧いなと思う。 『滝のむこうの国』(ほりかわりまこ 偕成社) ほりかわによる「今昔物語」三巻目。おいしいところを巧く再構成して、「今昔」世界を伝えます。 巻を追うごとに絵のほんわか度が増してきています。 さあさあ、ほりかわらしい人物の輪郭線をお味わいください。 『くろくまくん どんなかたち』(たかはしよしかず くもん出版) 「くろくまくんを まるくすると まるくまくん」。「くろくまくんを しかくにすると しかくまくん」。 ははは。キャラを動かさずあくまでキャラとして楽しませるたかいの腕はまだまだパワーアップしていきそうです。 『みにくい ことりの子』(イザベル・ボナモー:作 ふしみみさお:訳 あすなろ書房) とりたちは大きな卵を見つけます。そこから生まれたのはワニの子どもなのですが、とりたちは自分たちの子どもとして育てます。ワニの子どもにとってもとりたちは親です。 あることから、とりたちはワニに食べられそうに。その後の展開はお楽しみ。 ボナモーの柔らかいタッチが素敵。 『ドラキュラ』(ブラム・ストーカー:原作 リュック・ルフォール:再話 ブリュチ:絵 宮下志朗 船橋加奈子:訳 小峰書店) 世界の名作絵本シリーズの一冊。絵本となっていますが、再話の分量も多く、しっかりと読むタイプです。だから、ブリュチの絵も、絵本の絵というより、一つ一つが絵画と挿絵の領域を横断しながら展開していきます。迫力満点です。いい絵。 児童文学でも絵本でもない、その中間領域のこうした本がもっとあってもいい。だた、「世界名作」に頼るだけだと限界がありますが。 『トンネルをほる』(ライアン・アン・ハンター:文 エドワード・ミラー:絵 青山南:訳 ほるぷ出版) モグラやプレーリードッグの掘る穴から人間の造るトンネルまでを、並列に見せていきます。 見せられればなるほど、なのですが、これが案外新鮮でした。 トンネルは通路であるだけではなく避難壕でもあるのですが、私たちはどうしても前者だけをイメージしてしまいますし、実際、現代ではその役目がほとんどです。 そうであるのは、私たちの思考が「流通」や「便利」の方に向いているからなのでしょう。 『ぼくたちのいえはどこ?』(アレクシス・ディーコン:文 ヴィヴィアン・シュワルツ:絵 木坂涼:訳 徳間書店) 穴の中で気持ちよく眠る七匹のカワイイ生き物。でもだんだん大きくなって、穴からはみ出してしまいます。穴はベッドのスプリングでした。 って、ところから、発想がおもしろい。 外へ出るとそこはゴミ捨て場。やっぱり穴蔵が好きなので、とりあえずそこに捨てられている長靴やバケツやゴム手袋、なんやかやを適当に被って、穴蔵探しの冒険に。 普通の展開から次々と少しだけ外れていって、オチは意外な展開に。 『はなおとこ』でおなじみのヴィヴィアン・シュワルツの絵は、妙なかわいさにあふれています。 『おひさん』(たかべせいいち くもん出版) おひさんが、ある村を見下ろしていると、住民がなんだかとっても楽しそうなので、一緒に過ごしたいと降りてきます。 って、それって暑く、いや熱くなりすぎて大変だあ! でもおひさんも色々気を遣って、村人と楽しく遊びます。池は温泉になるし、でもすぐに入れないほど熱くなるし・・・。 おひさまではだめよ、おひさんでないとね。 高部画が今回もいい味を出しています。 しかし、どうすればこんなおもろい発想できるのかな。 『教会ねずみとのんきなねこ わるものたいじ』(グレアム・オークリー:作・絵 三原泉:訳 徳間書店) これまでのシリーズで、最も波乱に満ちた大冒険です。ねこのサムソンとアーサーたち教会ねずみは、急襲してきたどぶねずみに追い出されてしまいます。取り戻すためにサムソンが考えた手はなかなか良くできていたのですが、いざ実行すると思わぬ事態に! 画面割りもドラマ性を高め、楽しさ倍増。 もちろんオークリーの絵を眺めているだけでも幸せですよ。 『ぞうは どこへいった?』(五味太郎 偕成社) ぞうさんが悪い人たちに捕獲されます。コンテナに入れて運ばれます。どこかの港でコンテナを空けると、あらま、ぞうさんがいません。でもね、そうじゃなくて。それはぞうさんのお話を訊いてみましょうね。 現実と、絵としての有り様を重ねて妙な世界を、いや妙でなく五味世界を作ります。 『トチの木の1年』(太田威:写真・文 福音館書店) トチの木を中心に、賢く自然と共に生きる時間を伝えます。トチのはちみつ、川魚を包む葉、実の食し方。 実際に体験することのない子どもは多いでしょうけれど、樹木と人とのこうした繋がりさえ知っていれば、物事の見方は確実に変わります。 福音館のこのランドセルブックスシリーズは創作だけにこだわらないのがいいな。ランドセルには色んな物が入っているもんね。新作も入れていってね。 『スイスイスイーツ』(さいとうしのぶ 教育画劇) おいしいもんなら任せなさい! の、さいとうしのぶがスイーツで攻めてきました。古今東西、安もんからおしゃれもんまで、甘いの、甘いの、一杯です。 お昼に抹茶のロールケーキを食べて、血糖値と内臓脂肪を心配している小心者の私には、この絵本は毒だあ! 『いるの いないの』(京極夏彦:作 町田尚子:絵 岩崎書店) 人間の恐怖の大部分は想像力によって喚起されると思っています。それを逆算すれば恐怖によって想像力の喚起を促し、想像力を高めるといった考え方も出来るでしょう。そうした構造を、この作品で京極は創作に落とし込んでいます。 『コテングコウモリをご紹介します』(中島宏章:文・写真 「たくさんのふしぎ」2012.3月 福音館書店) 環境調査の仕事でコウモリへの興味を増した中島。やがてコテングコウモリの存在を知り夢中になっていきます。そうした中島のワクワク度が、載せられた写真群はもちろんのこと、文章からもどんどん伝わってきて楽しいです。「コウモリの撮影にもっとも必要なこと」は「コウモリの気持ちがわかるようになること」であり、わからなければ道具がそろっていても満足のいく写真は撮れないという言葉は、すべてのことに通底しますし、中島が言うとリアルです。 『よなおしてんぐ5にんぐみ てんぐるりん』(岩神愛 岩崎書店) カエルの悪者ガマエモンが出現したので、おおてんぐさまが若い五人の天狗に成敗を申しつけます。五人衆はそれぞれの特技を活かした大活躍! と、非常にわかりやすい大活劇です。 五人組ですから戦隊物かプリキュア5ですね。そこもわかりやすいです。 こうしたコテコテ話にして、作者は天狗について伝えるのです。 『とんとんとん だれですか』(はやしますみ 岩崎書店) 紙媒体の中でも特に絵本は、次のページを繰る喜びを誘います。そのためにはリズム感を呼び起こす必要があるので、変奏したパターンを使うことが多いのです。 この作品もその一つですが、ドアをノックして開ける設定は、ページを繰るのを誘うにはシンプルな王道ですね。 そこにはやしは、扉の向こうを影で見せるという工夫を持ち込みます。影では怖そうな生き物ですが、扉を開けると実は・・・。 うまいですね。 『おはようぼくだよ』(益田ミリ:作 平澤一平:絵 岩崎書店) こぐまが、大きくなったら何になろうと悩みます。ウサギさんはウサギになれば? って言います。ハリネズミはハリネズミにって。 でもどうも落ち着かない。やっぱりぼくはくまがいい。と気付くお話です。 小さな子の成長過程を描く絵本はいくらあってもいいですね。 だた、この絵本の場合、こぐまが自己を受け入れるキーは自分の匂いなのですが、そうであるなら、ここはくまではなく別の動物に差し替えた方が良かったのでは? 『ポップアップ人体図鑑』(リチャード・ウオーカー:著 日本語監修:酒井健雄 ポプラ社) 詳しい人体図鑑なんですが、見開き八面をつなげて(その裏側の八面は解説)、どど〜んと、子どもの原寸大骨格見本を仕掛け絵本風に作っています。 感動するなあ。いいなあ、これ。 壊れないか、破れないかだけが心配ですが、これを拡げたときの「おお!」って子どもの驚きが知識への興味を誘うのよ。 いいわあ、これ。 『草の葉のいろいろ12か月』(平野隆久 アリス館) 「生きものカレンダー5」です。『葉っぱのあかちゃん』の平野が伝えます。このシリーズは、見る角度を絞って(今作は「草の葉」)、世界の有り様を提示するので、知識の体系化の最初の一歩にはいいですね。 大人にとっても、曖昧な知識や単純に間違えて覚えていたことが修正されますのでおもしろいです。 『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 3月のまき』(かこさとし:文・絵 小峰書店) 様々な日本の行事を、その歴史からひもといて丁寧かつわかりやすく展開するシリーズ、三月編。全巻揃うのが待ち遠しいですね。さすが、かこさん。 学校図書館にぜひ。 『いきもの図鑑えほん』(前田まゆみ あすなろ書房) 百五十二種類の日本にいる生き物を紹介しています。都会では身近ではないものが多いですが、それはそれだけ自然が遠いことを子どもたちに教えてくれるでしょう。 百五十二種類ですから小さくなるのはいなめませんが、見開きに同じ種の様々な生き物が描かれている様は、それだけの生き物が存在することを子どもたちに伝えてくれます。 そんなことを伝えなくてもいい時代もありましたけれど、今は必要ですね。 『ストップ原発3電力と自然エネルギー』(飯田哲也:監修 新美景子:文 大月書店) 原発を使わず電力はまかなえるか? そのためには何があるかを、子どもにもわかりやすく解説した図鑑絵本です。 大人も、何となく知っている風力発電や太陽光発電の基礎知識が得られますので、目を通して欲しいです。 『ぶらぶらどうぶつえん』(井上洋介 小峰書店) 「ごりらは だまって かんがえる。せなかを みせて かんがえる。あかとんぼみて かんがえる。ごりらは だまって りんごをたべる」といった愉快な語りを添えて、動物たちが井上の画で活写されていきます。 どこを切っても井上洋介絵本で嬉しいですね。 『わがままくまさん』(ねじめしょういち:さく 高畠那生:絵 そうえん社) もうすぐ冬。くまさんはそろそろ冬眠の準備をしなければならないのに、何しろわがままなもので、マイペースで楽しんでいます。 周りの動物が心配して、なんとか冬眠させようとする姿がおかしい。 冬眠の話だけど、春っぽい温かさ。 『いたいのいたいのとんでゆけ』(新井悦子:作 野村たかあき:絵 すずき出版) 腰を痛めたおばあさん。孫娘がさすりながら、「いたいのいたいのとんでゆけ」。 と、その痛みは飛んでいき、露天風呂に浸かっていた鬼さんの所に。鬼さんは痛い痛い。 そんなことが続いたものだから鬼さんは・・・。 野村たかあきの木版画が暖かいですよ。 『おとうちゃんとぼく』(にしかわおさむ ポプラ社) おばあさんに大切に育てられた男の子(犬)が大人になって、今度は捨てられた子ども(ネコ)を拾い、自分の子どもとして大切に育てます。 血のつながりとは関係なく、大切に思いやることで互いを愛おしくなる姿を描いています。 人間で描くのは難しいから、犬や猫にずらして描きます。 【児童文学評論】 No.168 Copyright(C), 1998〜 |
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