徳間のゴホン!
第16回「寒い寒い……」

クリスマスの猫(ロバート・ウェストール:作 ジョン・ロレンス:絵 坂崎麻子:訳)
ぼくは黄金の国へ渡った(ロレンス・イェップ:作 夏目道子:訳)
ピンクとスノーじいさん(村上康成:作、絵)

           
         
         
         
         
         
         
    
 この原稿を書いているのは12月の初旬。めっきり寒くなり、夜の帰り道には、木枯らしに首をすくめるようになりました。今回は、「寒さが身にしみる本」をご紹介しましょう(今現在、寒くてたまらないという方は、夏の暑い日に読んでくださいね…)。
 『クリスマスの猫』は、おじさんの家で冬休みを過ごすことになった11歳のキャロラインのお話。牧師のおじさんは気が弱いために、意地悪でケチな家政婦のいいなり。高い塀に囲まれた牧師館は火がたかれることもなく、寒くて凍えそうです。この寒さは、イギリス北部の冬の寒さだけではなく、意地悪な心の冷たさのせいかもしれません。でも馬屋で飢えた身重のの野良猫を見つけたキャロラインが、塀の上に現れた元気な少年ボビーといっしょに、猫のために立ち上がったとき…思いがけない暖かい結末が待っていました。キャロラインとボビーの「その後のロマンス」も、さらに心を暖めてくれます。
 『ぼくは黄金の国へ渡った』は、19世紀後半、シエラネバダ山脈に鉄道を通すという苛酷な労働に従事した15歳の中国人少年オターと仲間たちの物語。トンネル掘りの労働のきつさ、火薬による事故、劣悪な労働条件などのほかに、オターたちは「雪の虎」と呼ばれる山の、冬の厳しさに悩まされます。けれど物語後半のクライマックスで、雪崩を防ぐために頂の雪を爆破しようと山を登っていくオターとおじさんの前に、冬は思いがけぬ美しさを見せてもくれます。凍った池のダイヤモンドのような輝き、凍りついた滝に咲く氷の花…結局オターは、この山で叔父さんを失ってしまうのですが、仲間たちや白人少年ショーンとの友情に支えられ冬を乗りきったとき、オターはひとまわり大きく、たくましく成長していました。
 『ピンクとスノーじいさん』は、初めての冬を迎えたヤマメのピンクを描きます。大きなイワナのスノーじいさんが、ピンクに言います…「もうすぐ食べるものが何もなくなるぞ…待つしかないんじゃ、春までな」その言葉のとおり、鳥もけものも魚たちも、みんなみんなおなかをすかせ、体がこちこちになったまま、つらい冬の日々を耐えるのですが…? 冬の寒さ、つらさ、厳しさがひしひしと伝わってくるぶん、最後の数場面の、春が来たときの溢れるような喜びが、鮮やかに感じられる絵本です。
 寒いのは苦手だけれど、常夏の国に住んでいたら「冬を耐えた後の春の喜び」は味わえない。ああ、どっちを取ったらいいの? …誰かが常夏の国に招いてくれたわけでもないのに、真剣に考えている今日この頃です。(上村令)
テキストファイル化富田真珠子