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 前回、『アイアンマン』『星を数えて』『盗まれた電撃』のあとがきを掲載して、今月、さて、どうしようかなと思ったら、「あとがき」がない!
 本が出ていないことはないのだ。
 まず、3月に『英米ホラーの系譜』(ポプラ社:「ホラー・セレクション」第9巻)が出ている……のだが、これは監修と翻訳の両方。
 ポプラ社の「ホラー・セレクション」、ジェネラル・エディターは赤木かん子。そのうちの第9巻目をぼくが担当した、ということ。
 この『英米ホラーの系譜』(古典編)をまかされたとき、英米の恐怖小説、それも短編をいくつか集めるとしたら、なにがいいかなと考えるのが、まずなにより楽しかった。
 その結果、次の作品にしぼってみた。

・壜の悪魔、スティーヴンソン
The bottle imp (1893) by Robert Louis Stevenson
(大谷真弓)
・告げ口心臓 ポー
The Tell-Tale Heart by Edgar Allan Poe
(金原瑞人)
・アウルクリークの事件 ビアス
An Occurrence at Owl Creek Bridge by Ambrose Bierce
(野沢佳織)
・闇の海の声 ホジスン
The Voice in the Night by William Hope Hodgson
(秋川久美子)
・ポドロ島 ハートリー
Podolo by L. P. Hartley
(三辺律子)

 ところが、最後の「ポドロ島」、ちょっと勘違いをしていて、まだ版権が切れてなかった。というわけで、これは旧訳のまま、ほかの巻(「わが家の食卓にようこそ」)に回してもらうことにして、さて、何にしようかなと、考えた結果、ディケンズの「信号手」にした。
 というわけで、この品揃え、けっして損はさせない。
 そもそも、すべて新訳だ。この内容、この翻訳、自画自賛ながら、素晴らしいとしかいいようがない。
 やっぱり、翻訳は新しいほうがいい。また、訳者五人それぞれの訳文の違いをくらべてみるのも楽しいと思う。ただ、金原の訳がいちばんつまんないとかは、いわないでほしい。このところ、いつもにもまして傷つきやすいので。
 そういえば、このなかに入れたかったけど入れられなかったホラーの短編は、それこそ山ほどある。「英米ホラーの古典」だから、新しいものは入れられないし、古いものでも、使えないものがあるし。たとえば、ジェイコブズの「猿の手」とかは絶対に入れたいけど、これは同ポプラ社の「リトルセレクション」(赤木かん子監修)のうちの一冊に入っているのだ。それも金原訳で。
 じつは、今年の4月から、法政大学の社会学部でやっている演習(ゼミ)の内容が変わった。これまで「創作」だったのが、「翻訳」に変わったのだ。それと同時に、一般授業で「創作」を教えることになった。これは、受講生が多いとまずいので、年間、原稿用紙で200枚以上書くことという条件をつけた……にもかかわらず、50名弱の学生が登録してしまったらしい。ということは、一年間で1万枚の原稿を読まなくてはならない。
 来年は、考えなくちゃ。
 それはともかく、その一般授業の「創作」で、「猿の手」をコピーして持っていき、あれこれ30分ほどしゃべって、なんでもいいから好きなことを書かせた。エッセイでもいいし、ショートショートでもいいし、感想でもいいし……という具合だ。
 で、提出してもらったものを読んで、驚いてしまった。
 いやあ、おもしろい!
 そのうち、HPで紹介するかもしれないので、アンテナを張って待っていてほしい。
 若い連中って、やっぱり、おもしろい。
 ともあれ、ポプラ社の『英米ホラーの系譜』、最初に、原稿用紙で20枚以上の金原の解説がついている……ので、あとがきはない。のだ。
 あ、そうそう、その解説で、「トランシルヴェニア」を「ペンシルヴェニア」と間違えて書いちゃった。すいません。

 さて、次に『シルバーチャイルド』。
 ご存じ、「レイチェル」シリーズのクリフ・マクニッシュの最新作だ。三部作。このあと『シルバーシティ』『シルバーワールド』と続く。
 「レイチェル」シリーズの第三巻をさらに発展させたような作品で、子どもたちが、宇宙からやってくる脅威に立ち向かうために戦うというファンタジー。ただ、「ナルニア」「指輪」「ハリー・ポッター」という、いままでのファンタジーとはまったくちがう。
 どちらかといえば、石森章太郎の『幻魔大戦』や、楳図かずおの『漂流教室』といったテイストの作品と、『レイチェルと魔導師の誓い』を混ぜ合わせて、スケールを10倍くらいにした感じ。
 こちらは、なぜあとがきがないかというと、第三巻目の終わりに、ひとつだけつける、ということになったからだ。
 そんなわけで、こちらのほうのあとがきはそのうち。
 というわけで、今回、あとがきはありません。