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1.今回は短いです 前回の原稿を書いてから出た本はロバート・ウェストールの『ブラッカムの爆撃機』(岩波書店)一冊だけ。 そのうえ、この本にはあとがきが、ない。 というわけで、今回、ここに載せるあとがきはない。 決してさぼっていたわけではないのだが、まあ、出版時期が重なったり、空いたりというのはよくあることで……と書きながら、あれ、11月に出版予定の本って、あったっけ? すでにあとがきも書いた本は、ソーニャ・ハートネットの『小鳥たちの目にしたもの』、リック・リオーダンの〈ハーシー・ジャクソン〉シリーズ第二弾『魔界の冒険』。訳了して出版社に渡してある本は、ニール・ゲイマンの『アナンシ・ボーイズ』、同じくニール・ゲイマンの『グッド・オーメンズ』、〈エリオン国物語〉シリーズ第二弾、ジェラルディン・マコックランの『スマイル』(ただ、これは校正の段階で、あちこち直したくなって、取り戻したところ。早くみなくちゃ)。 あと、監修のほうで『12歳からの読書案内(海外編)』が進行中。また、古典芸能の入門のそのまた入門書も進行中。 そんなわけで、これからもまだまだ出るので、首を長くして待っていてください。 2.『ブラッカムの爆撃機』について 『ブラッカムの爆撃機』はずいぶん前に福武書店から出ている。 じつは、今年の春、スタジオジブリの編集者のかたから連絡があって、宮崎駿さんがぜひこの本を復刊したいと思ってらっしゃるとのこと。ぼくもこの本は大好きなので、喜んでお話しをうかがいにいったところ、すでに、宮崎さんのフルカラーのマンガが20枚弱できあがっていた。どんな内容かは、本を読んでいただくとして、カラーのマンガがとてもきれいで、また描き込みもていねいで驚いてしまった。1頁分を描くのに、1日か2日かかるとのこと。ということは、全24頁描くには、毎日かかって約一ヶ月。まちがいなく金原の25倍くらいは忙しい宮崎さんの、こんなにまでして、この本を出したいという熱意、すごいなあと思ってしまった。 そのうえ、すでに今年の2月、スタッフの人たちとウェストールゆかりの地を訪れ、さらに、『ブラッカムの爆撃機』に出てくる、ウィンピー(ウェリントン)という爆撃機にも乗ってきたという(もちろん、博物館に置いてあるものに) そんなわけで、宮崎さんはマンガの仕上げにとりかかり、金原はこの本に収録されていた「ブラッカムの爆撃機」と「チャス・マッギルの幽霊」の訳文に手を入れ、さらに、「わたしを作ったもの」という、光村図書出版社の中3の国語の教科書にかつて載っていた短編を訳し直すことになった。そして、リンディ・マッキネルによるウェストールの略歴を野沢さんに訳してもらうことになった。 そんなわけで、この本はこんな構成になっている。 1.マンガ「ウェストール幻想 タインマスへの旅」(導入と解説) 2.「ブラッカムの爆撃機」 3.「チャス・マッギルの幽霊」 4.「ぼくを作ったもの」(「わたしを作ったもの」を改訳、改題) 5.マンガ(あとがき風) 6.「ロバート・ウェストールの生涯」 まあ、おもしろい本ができたなあと、感心しているところ。 もとより、ここに収めた短編はぼくの大好きなものばかり(というか、ぼくの選んだもの)だし、これに宮崎さんのマンガが加わった! 不思議な出会いだなと思う。 ウェストールさん、天国でどんな顔をしているか見てみたい。 ちなみに、宮崎さんもぼくも、ウェストールには会っていない。 スタジオジブリの出している月刊誌「熱風」の10月号が、ウェストールの特集で、宮崎駿、小泉聡、三浦俊章、金原瑞人の4人がエッセイを書いている。 宮崎さんがエッセイのなかでこんなことを書いている。 「ウェストールは兵役の義務で兵隊にはなったけれど、戦争に行ったわけじゃないから、戦争を描いていても、その多くは彼が兵隊の時期に体験したことと、少年時代に体験したことと、それから自分の想像力だと思うんですよ。想像力だと思うんだけど、『ブラッカムの爆撃機』のように爆撃機のなかの状況をリアルに描いた人間は、僕が知る限りでは世界で彼しかいない」 そう、このリアルな感覚こそ、ウェストールの持ち味だと思う。とくに、戦争物の場合は、それがよりはっきり伝わってくる。 この本、スタジオジブリが編集で、出版が岩波書店。 お勧めです! |
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