赤い鳥を追って

シャロン・クリーチ

もき かずこ訳 講談社 1998

           
         
         
         
         
         
         
     
主人公は一三歳の女の子、ジニー・テイラー。家族構成は父母、伯父夫妻、兄弟が六人。大家族ですね。兄弟姉妹の真ん中にいる彼女は目立ちません。本人の言によれば、「わたしが無口なのは(略)、わたしのいいたいことのほとんどは、すでにだれかが口にしていることだからだ」。姉メイによれば、ジニーは「いちばん変わり者で、いちばんとるに足りない、あわれなみそっかす」。
彼女、伯父夫妻に可愛がられてはいるのやけれど、その大きな理由は、幼くして亡くしたジニーと同い年のローズの代わり。また、これまでジニーに近づいてきて優しくしてくれた男の子はみんな、実はメイが目当てで、「わたしは本命を射止めるまでのだしに使われただけなのだ」。そして、町に出かけて店に入ると必ず聞かれるのは「あんた、どのテイラー?」
要するにジニーは、周りの誰にとってもジニーそのものとして存在していない。メイの妹のジニーであったり、ローズの同い年の従兄弟のジニーであったり。しかもジニー自身がそれを自覚しているわけ。昔引っ越していった幼なじみのジェイクが舞い戻ってくる。彼はジニーに近づいてくるけど、また「本命を射止めるまでのだし」であるかもしれず…。「母でさえ、ジェイクのお目当てはメイだと思っているのだ」から。「誰も私を愛していない」。
実はほんとはそうでなくてもそう思ってしまうこと、誰にも経験あるはず。特に自我の襞がチリチリピリピリしている思春期なんかはね。さてそんな折り、ジニーは地面の下に埋もれていたトレイル(昔使用されていた、古道)の一部を家の前で発見。彼女これをもう一方の端まで全部掘り起こそうと考える。っても何キロもある道。どうせあきらめるさと、周りは思っています。が、ジニーの決心は固いのやね。今は人様の牧場になっている所も迂回せず、柵を破りまっすぐに進んでいく。やがて、いちいち家に戻るには大変な距離まできたとき、ジニーはキャンプをはる許可を親に求める。外泊です。
親兄弟やBFとは何の関係もない、トレイルを復活させるという行為で自分を作りあげていくジニーの弁は「わたしはちがう自分を知ってほしかったのだと思う」。まっすぐな物語です。伯父夫妻がいいですよ!(ひこ・田中
げきじょう1998/04