あかてぬぐいのおくさんと7にんのなかま

イ・ヨンギョンぶん・え/かみやにじえ/福音館書店刊

           
         
         
         
         
         
         
     

 欧米の絵本に比べると、アジアの絵本を目にする機会のすくない私。ぐうぜん入った本屋さんの店頭で、韓国の絵本を見つけました。韓国の絵本は以前、『マンヒのいえ』(セーラー出版)を読んだことがあります。家の内部が緻密に描写され、となりの国の人たちがどんな生活をしているのかが伝わってくるような本でした。なかでも蚊取線香や算盤、三角に切ったスイカなど、ページの端々に日本の家庭にあるものとそっくりのものを見つけ、「韓国の夏も日本と同じように蒸し暑くて蚊がたくさんとんでいるのかなぁ」と想像して楽しみました。
 今回とりあげるのは『あかてぬぐいのおくさんと7にんのなかま』。タイトルにある「あかてぬぐいのおくさん」は、いつも赤い手ぬぐいを頭にかぶっているため、そう呼ばれている評判のおはり上手です。奥さんの部屋には、ものさし、はさみ、はり、いと、ゆびぬき、のしごて、ひのしの7つの道具がありました。ある日、奥さんがうたたねをしていると、ものさしが「奥さんのおはり上手は私のおかげ。このなかで一番大事なのは私」と自慢を始めます。これを聞いた他の6人の道具たち、黙って聞いているわけにはいきません。それは間違い、とばかりにそれぞれが「奥さんのおはり上手は私のおかげ」といい始め、やがて大騒ぎになってしまいます。途中からみんなの自慢話を聞いていた奥さんは、とうとうこらえきれなくなって起きあがり、大きな声で言って聞かせます。「おまえたちは道具にすぎない。私の腕がいいから、おまえたちは自分たちの役目を果たせるんだ」。そういうと奥さんはまた横になり、7人にくるりと背中を向けると、眠ってしまいました。
 7人のなかま、ものさしふじんに、はさみじょうさん、はりむすめに、いとねえさん、ゆびぬきばあちゃん、のしごておとめ、ひのしねえはすっかりしょげてしまいます。自分なんかとるにたらない、どうでもいいものだと思うと、悲しくて悲しくてたまらない。短気なはさみじょうさんは、出ていこうとして、ゆびぬきばあちゃんにとめられる始末です。一方、奥さんは夢をみていました。夢の中では、7人の道具たちが姿を消してしまい、おはりをするのもままならず…。お互いの大切さを知って、奥さんと7人は仕事を続けることになる、というお話。それぞれに個性的で、表情豊かな7つ道具たち。登場人物はみな女性で、ひとりひとりが韓国の民族衣装、チマ・チョゴリを身につけているのもきれいです。ものさしや、糸巻き、針箱といった小物の、凝ったデザインとカラフルな色彩にも目を奪われます。最後のページに描かれている小物はどれも、手仕事の素晴らしさをうかがわせてくれます。奥さんと7人の力を合わせた力作なのでしょう。いったい何に使うのかな。ご存じの方いらっしゃったら教えてください。<編集部・星野
徳間書店 子どもの本だより 東新橋発読書案内【ていねいな手仕事】 2000/05.06
テキストファイル化熊木寛子