アントニーなんかやっつけちゃう

ジュディス・ヴィオースト・文 アーノルド・ローベル・絵
渡辺茂男・訳 文化出版社

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 ぼくのおにいちゃんのアントニーは「おまえなんかあっちへ行け。ぶっ殺すぞ」とおどかす。おにいちゃんのやることが何でもうらやましくて後を追いかけるけれど、いつも邪魔にされ、邪険に追い払われる。
 「アントニーは心の底では、あなたのことが大好きなのよ」と、おかあさんは言うけれども、ぼくは信用しない。「六つになったら、アントニーなんかやっつけちゃう」
 時々、アントニーにはできて、ぼくが今できないことを想像する。アントニーが流感にかかって、ぼくだけ、おじいちゃんと映画を見に行ったり、ゲームをやって、スイスイ勝ってしまう……。
 いつも押さえつけられ、悔しい思いをしている弟の立場を、ユーモラスな絵を添えて描いています。兄弟げんかの中から、相手に対する手ごたえや手加減や思いやりを知ることもできます。子どもの人格を大切にしている大人が温かく接している様子が読みとれます。
 
(亮)=静岡子どもの本を読む会
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