青い図書カード

ジェリー・スピネッリ作
菊島伊久栄訳 偕成社

           
         
         
         
         
         
         
    
 現在、テレビ・ゲームやコミック、アニメに席巻されている子ども文化の世界から、「本」はますます排除される傾向にあります。
 けれども、子どもが(もちろん私たち大人も)一冊の本に出会い、それを楽しむことは、本物の手触りを持つ能動的な喜びとして、特に現代に必要なことでしょう。
 そのための一つの場所としての図書館。そして理解ある仲介者の存在。それは子どもたちが出会う、魅力あふれた「心の領域」です。
 この本は、まったく思いもよらないアプローチで、そのことを読者に伝えてくれます。四つの短編にはすべて、不思議な「青い図書カード」があらわれます。はじめの物語は、十二歳のマングースが主人公。仲間のウィーゼルとともに店で万引きし、町中にスプレー・ペンキで自分の名前を落書きする極めつけの「悪ガキ」です。でも、マングースのもとに舞いこんだ青いカードは彼を図書館に導き、『不思議あれこれ』という本にすっかり魅了されて……。
 次の物語では、幼い頃からテレビ漬けになっている少女ブレンダが、学校の提唱する<テレビを消そう大週間>のために、親にスイッチを消され、パニックに陥ります。でも、青いカードのおかげでヴァーチャルでない現実と自分自身を発見したブレンダは、<大週間>が終わってもテレビをつけませんでした。幼い時に母親を麻薬中毒で亡くしたつっぱり少年ソンスレイが、昔、母とともに読んだ一冊の本に出会う第三話、そして最後の物語は、孤独な女の子と、移動図書館車を「ハイ・ジャック」したパンク・ファッションの娘が友情で結ばれる話です。
 現代アメリカの子どもたちを活写している点でも注目されるこの作品ですが、青い図書カードとはいったい何でしょう? キリスト教に引き寄せていえば、聖霊のようなものではないでしょうか。(きどのりこ
『こころの友』2000.03