青さぎ牧場

ヘプサ・F・ブリンズミード作
越智道雄訳 冨山房

           
         
         
         
         
         
         
     
 これは私の大・大・大好きな、とっておきの本のなかの一冊です。
 非常にバランスがよくてできのいい、そうして読み終わったあと、思わずふ〜う、と満足の吐息をついて幸福になれる……そういうタイプの物語です。
 舞台はオーストラリア…ヒロインのアマリリスは大学受験資格をとったばかりの十七歳だね……母親はなく、父親はパプア・ニューギニアへ木を切りに行っていて不在、彼女は上流の堅苦しい女学校の寄宿舎暮らしをしていて親に対する怒りを体の奥に隠し、冷たい、お上品なカラをつくって自分を守っています。頭が良く、誇り高いけど、このままいくとヤバイってとこね。
 で、お父さんが亡くなって、遺産として家と土地を相続するところから話は始まります。いたなんて全然知らなかった祖父と初めて会い、浮浪者同然なことにまずショックを受け、そうして故郷に帰ると、アマリリスは自分が安らぐのを感じてびっくりするの。
 同い年の友だちもでき、楽しく海で遊び、古くて汚い家を片づけ、新しい壁紙を張り、用心深くおじいちゃんになじみ……というなかでアマリリスは、人の愛情なんかいらないわ、と思ってた自分のガードをだんだんくずし、解放されるのです。
 そのほかに出生の秘密とか、なぜ父親が自分を放っぽっといたのかとか、おもしろい出来事がいろいろあるのですが、それは読んでのお楽しみ。この頑固で誇り高い、しんの強い女の子が解放され、安らぎ、もっと強くなっていく過程は本当に楽しいです。人が幸福に生きるには自分の居場所、生きがい、仲間がいるのだ、ということが実感できる偉大な癒しの物語です。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)