足音がやってくる

マーガレッ卜・マーヒー作
青木由紀子訳 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 魔法使いの一族の物語です。
 マーヒーは自分の一連の物語のなかで使う〃魔力〃についてなにも詳しい説明をしてくれないので推測ですが、ときどき先祖返り、というコトバが出てきますから、これはニュージーランドのネイティヴピープル、マオリ族の魔法のことだと思います。もしまちがってたら教えて!
 イギリス式のファンタジーと、地元の土着ファンタジーを混ぜあわせるのはなかなか難しく、日本でも活字で成功した人はほとんどいないと私は思います。日本で成功したのはみなさんマンガ家で、手塚治虫、水木しげる、新しいところでは佐藤志生の『ワン・ゼロ』なんか、コンピュータとアーリマン(インドの神々ね)と日本のお狐さまや蛇や蛙の精たちとがミックスされていて絶品ものです。脱帽。
 というわけで、この本のなかでもほとんど説明はないんですが、どうやら主人公の男の子が家族のなかで魔法使いとして期待されてるらしい……確かにいろいろなことが起きるし、見えない友だちもいる……でも、本人は自分が魔法使いではない、という確信があるのです。
 てはいったい誰が……!? なんのために!? というギモンに加え、最近彼は夢の中で足音がだんだん近づいてくるのを聞くのです。
 誰の足音なのか、なんのためにくるのか、まったくわからずに!? というこれは一種のオカルトホラーストーリーに加えて、タネをバラしちゃうからここではこれ以上書かないけど、アダルト・チルドレンの癒しの物語でもあるのです! おもしろいよ。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)