思い出のマーニー

ジョーン・口ビンソン作
松野正子訳 岩波少年文庫

           
         
         
         
         
         
         
     
 みなしごのアンナは、海辺の村にいかされることになりました。
 なぜかというと、アンナが、アンナのいう〃ふつうの顔〃-ほかの人からみると無表情-をするようになったからです。
 それだけじゃなく授業にも集中しない……友だちとも遊ばない、何もしない、する気がないってことで……先生やミセス・プレストン(面倒をみてくれた人ね)を心配させたからさ。
 アンナ自身はね、なんにも痛痒を感じてなかった……。
 こまったことはなかったの。自覚できなかったんだよね。
 感情のスイッチを切っちゃって、なんにも感じないほうがラクだし、それのどこが悪いの? と思ってたんだよ。
 でもまわりの大人はさ、これはマズイ、と思うだけちゃんとしてたし、アンナのことを、心配してくれて、海辺の村にいくように手配してくれたのです。
 そう、アンナは誰にも心をひらくのをやめ、心配されるとイライラするようになってたんですが、その村でアンナは一人の女の子と会います……。マーニーと。
 子どもを癒すのには必ずそれを支えてくれる大人のバックァップがないとできませんが、直接その子の心をひらくのには、子ども同士の共感能力にまさるものはないわけで、このマーニーがいったい誰なのか、がだんだんわかっていく過程はとてもわくわくします。
 子どもがどうやって傷つき、どうやって癒されるかの大変みごとなテキストです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)