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![]() 骨子の説明だけでも、この作品が「ナルニア国」的善悪二元論に立つファンタジーとは別種な世界観・人間観に基づくものであるとわかる。そして、二つの勢力の争いは、タタールがカムチャツカを攻めるかどうかといった政治情勢にあり、人間一人ひとりには絶えず姿を変えられる守護精霊ダイモンがついている、そして魔女や鎧を着た熊族がいる世界である。 こういう珍しいキャラクターたちが、ヒロインであるライラの、さらわれた子どもたち探索の危険な旅の展開とともに次々登場し、ときに壮大で神秘的な、ときに恐怖と不安に満ちた場面をくりひろげて、読者を飽きさせない。 牢固たる物語世界を実感させる緻密な構成力と、そっけないほどに記録風な文体が、独創性をさらに高めている。(神宮輝夫)
産経新聞1999/12/07
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