月光浴

石川賢治・写真
小学館

           
         
         
         
         
         
         
     
 最近「宇宙」とか「クジラ」とか、いい写真集が結構あるねェ、と思ってたら、また一冊、とびきり美しいのが出ました。『月光浴』。なーんと、全部満月の光だけで撮ったという写真ばっかり並んでるの。そうなんだ、月の光は美しい、とか月の光に照らされた世界は美しい、っていうのはまあだいたいだれでも想像つくでしょ。でもさ、それで写真を撮ろうってのはまさにコロンブスの卵。いわれてみれば確かにそうだけど、今までだーれも思いつかなかったもんね。そのアイデアにまず乾杯! でもってさ、その写真ってのがホント、美しいの!
 長い時間かけて、あれこれ工夫して撮るんだろうから、じかに目で見た風景とは違うと思うけど、そのぶん人間の眼では捕らえられない〃絵〃ができてくるんだよね。
 うーん、写真の美しさをコトバで説明するってのは難しいですがね。花も木も岩も水も土も、なにもかもしっとりとしてつややか、朝になったらまた人間たちが起き出してきて、わいわいがやがやが始まるとは思えないくらい静かな世界です。そうして写真てのは、できあがるまでも結構人手や時間をくうけど、できあがってからも、ただ並べるだけじゃダメなんだよね。カットや印刷の仕方ひとつで生きたり死んだりしちゃうんだもの。写真家さんとその裏方さんたちみんなに乾杯! そしてまた、帯のキャッチに〃写真絵本〃とあるのをみて、思わずほほえんでしまいました。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1990/10/14