夏至祭の女王

ウィリアム・メイン:作
森丘 道:訳 偕成社 1977/1994

           
         
         
         
         
         
         
     
 十九世紀のヴィクトリア朝後期、イギリスの荒野の中の小さな村が舞台。
 下半身不随のため終日ベッドで暮らす少年マックスの、世話係として雇われたケイティー。夏至祭の王に選ばれたマックスが、自分を女王に選んでくれることを秘かに願っていたのだが、マックスが選んだのは夢の中に現れた少女だった。その少女を見つけ出すためにケイティーは、マックスの夢の道筋を追ってゆく。するとそこに現れるのは、夢の話と同じ風景、同じ町並。その行き着く先に海、波止場、そしてたどりついた小さな島。果たしてそこに、幻の女王ヘレンがいた。
 ヘレンを探しあてたこと、それはマックスの夢が現実のものとなった喜びであると同時に、チクチクと針が胸に突き刺さるような苦しみでもあった。
 階級制度が厳しかった時代に、身分違いの一途な恋をした村娘が、その喜びでもあり苦しみでもあった恋を通りぬけて、愛へとたどりつく物語。
 読後、この〈愛〉がなぜかストンと胸に落ちない。苛立たしさと気持ち悪さを感じてしまう。その愛とは、マックスを愛するのと同じようにヘレンをも愛させるような、残りの人生を二人に捧げ尽くしてしまうような、献身的で偉大で崇高な愛である。作者がかつての時代こんな風に人を愛し生きた女性がいたんだと伝えたかった気持ちは解る。が、九四年翻訳出版されている。今、何故この愛なのか? 現代を生きる若い人たちは、この物語をどんなふうに読むのでしょう?
 原作は一九七七年刊。(まりも ゆき
読書会てつぼう:発行 1996/09/19