キル卜

スーザン・テリス
堂浦恵津子訳
晶文社

           
         
         
         
         
         
         
     
 さて、今日ご紹介する『キルト-ある少女の物語』は一九八七年の作品ですが、舞台はもうすぐ二十世紀になろうかという一八九九年のアメリカ。ボストンに行きたい、と思ってる十八歳の女の子が主人公です。題名から、いまはやりのアーリーアメリカンの手芸の本かな、とか思うでしょ?
 ちがうの!
 これはね、なんと「拒食症」の女の子の話なんだよ、それも十九世紀の-。
 そりゃね、はっきり「これは拒食症ですな」なんて書いてはいないけど、この女の子・ネルの症状って、拒食症だと思うな。これ以上食べるのは許されないことなんだって感じて、やせてっちゃうんだもの。
 そいでね、なにが原因かってったら、やっぱり家族の、それも一見愛情深くみえる(本人たちもそう信じきってる)家族のウラにある無理解と愛情の欠如なんだと思うよ。
 貧しい両親を助けて、大嫌いな農場の仕事も一生懸命やってきた長女でいい子チャンのネルが、いとこと結婚しろ、といわれてパンクするんだよ。自分がやりたいことは別にあるのに家族に売られた、と感じてね。あなたのためなのよといわれて、頭では納得しても体がいうこときかないの。
 ディテールは違うけど、これっていまの日本にごろごろある話よね。
 女の子だけじゃなく、男の子も…読んで。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1990/05/06