子どもの本の森(11)

身近に感じる図書館が増えた

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 静岡県図書館大会が、島田市で10月23日に開かれました。図書館の職員をはじめ、読書活動をしている人々や、図書館を拠点に活動している人たちがたくさん集まりました。
 「21世紀の図書館」と題してパネルディスカッションのあと、図書館のあり方と図書館づくりのこと、こどもの本のこと、読書会のことなど、10の分科会にわかれ、活発な議論と情報交換がされました。
 わたしは「こどもの本との楽しい出会いを求めて」という分科会に参加。読書の楽しさを伝え、こどもと本とを結びつける手だてを考えようと話し合われました。
 ここ数年のあいだに、静岡県内の図書館はめざましく発展してきました。りっぱな図書館ができあがったまち、図書館がまだないまち、これからつくろうとしているまち、いまある図書館をもっとよくしていこうというまち、それぞれです。
 それとともに、図書館に寄せる人々の期待もふくらんで、図書館にかかわる市民が、それぞれの市や町で、図書館づくりの活動をするようになりました。
 そして、また図書館側からも利用者であるわたくしたちに、とりわけ子どもたちにエールをおくりはじめたのです。ようやく、図書館が身近なものに感じられるようになりました。
 こどもたちに人気のある『どろんこハリー』でおなじみのアメリカの作家ジオンが『はちうえは ぼくにまかせて』という本を1959年に書いています。その中に図書館がでてくるのです。
 少年トミーは、夏休みどこにも出かけない代わりに、旅行する人の鉢植えを世話することにしました。トミーは鉢植えの世話が上手でした。鉢植えの木はどんどん育ってしまいました。あるあさ、ごはんもそこそこにトミーは「ちょっといってくるね」といって駆け出していきました。トミーは、図書館で、植物の本をかたっぱしから開いてみました。そして、やっとみたいと思っていた本をみつけました。
 発想がたいへんおもしろい絵本ですが、図書館がすっかり生活の一部にはいりこんでいるようすがごくあたりまえに、なにげなく描かれています。図書館の歴史の差を感じる作品でもあります。
 この少年のまちのように、歩いていくことのできる図書館がいくつもできたなら、どんなに楽しいことでしょう。こどもたちのまわりに身近な図書館を願っています。

(静岡子どもの本を読む会 天岸やす)

▼とりあげた本▲
「はちうえは ぼくにまかせて」(G・ジオン作、M・B・グレアム絵、もりひさし訳 ペンギン社)

▼すすめたい本▲
「ごめんなさいフォリオさん」(J・ファルタード作、F・ジョー絵、とりごえしん訳 ブックローン出版)
「本はこうしてつくられる」(アリキ作・絵、松岡亨子訳 日本エディタースクール出版部)
テキストファイル化塩野裕子