子どもに聞かせる世界の民話

天崎 源九郎・編
実業之日本社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 こどもが本を読まなくなったとか、テレビや漫画ばかりに興味を持って、という声をたくさん聞きます。物語の世界を楽しむのに、文字だけを読まなくても、味わうことができます。そのひとつは、昔話を聞くことです。生の声で直接おとなが語ってくれたり、読んでくれたりする時間は、こどもにとって至福の時のようです。
 そんな時、この本は最適です。昔話をひとつ、国や民族の中から一編ずつ選び出し、八十一の話を集めています。ひとつの話の背景には、その民族の生活や習慣が、色濃く出ていますが、根本を流れるのは、人々の生きることへの「応援歌」。いま注目されているルーマニア、チェコスロバキアなどの東欧の国々や中近東の国々の話など、私たちにあまりなじみのない話が、たくさんあります。
 そのひとつに、ジャマイカ島の「アナンシと五」があります。アナンシはとにかく悪いヤツで、魔女の呪(のろ)いを利用して「五」と言った者を、食べてしまいます。アヒル、ウサギをたいらげておなかがいっぱいになっているのに、欲を出してハトを食べようとして失敗し、自滅してしまいます。
 力の弱い者は知恵を絞って、たくましく生き抜きます。比較的短い話が多いので、ほんのチョッとした仕事の合間や寝る時に読んで、楽しむことができます。長いこと品切れでしたが、再販されて入手できます。
 (小)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化岡田和子