クリンドルラックスがやってくる!

フィリップリドリー作マーク・ロバートソン絵

唐沢則幸訳 徳間書店 1996

           
         
         
         
         
         
         
     
 竜退治の英雄物語を下敷きにしてイギリスの若い作家が書いた、ちょっと漫画チックなユーモア小説。
 トカゲ通りに住むラスキンは、ちびで赤毛でやせっぽち、おまけに牛乳ビンの底みたいなメガネをかけ、キイキイ声でしゃべるサエない少年である。
 役者志願のラスキンはヒーローに強いあこがれを抱いていて、学校劇の配役でも、ハリボテの竜の前で「我こそは勇敢にして賢く、また見目うるわしき勇者なり」なんてセリフを言う主役につきたかった。
 しかしクラスのみんなは、彼がハリボテの竜のそばに立っただけで大笑い。これほど英雄にふさわしくない容姿もないのである。果たして、彼は見かけどおりの少年なのか?
 実はトカゲ通りの地下では、もう一つのドラマが進行している。ラスキンの父が動物園から連れ出したワニの子が、巨大に成長してクリンドルクラックスという怪獣になっていたのだ。怪獣はラスキンの唯一の友だち、元地下水道管理人のコーキィのいのちを奪った。ラスキンは形見のヘッドランプつきヘルメットをかぶって、竜退治におもむく。
 トカゲ通りに住む人々のキャラクター設定もユニークだから、漫画化して「少年ジャンプ」の手塚賞に応募すれば入選するかもしれない。いじめっこのエルビスが秀逸。 (斎藤 次郎)
産経新聞 1996/09/13