実用・青春俳句講座

小林恭二

福武書店


           
         
         
         
         
         
         
         
     
 ひさしぶりに目からうろこがぼろぼろ落ちるような本に出会った。ここには現代俳句にかんするエッセイが一〇ほど集められていて、そのどれもに驚きと発見があふれているのだ。
 俳句というものはひとりで作るものではなく、句会で作るものなのだと作者は主張しているが、「新鋭俳人の句会を実況大中継する」という大中継を読むと、ムムムム、句会とはこのようにすさまじく、面白く、迫力のあるものなのかと思わず感動してしまう。句会についての作者の言葉を引用してみよう。「よい句会は一種のロールプレイングゲームと同じだと思ってます。俳句という暗号にも似た小さな情報を持って、想像力だけを頼りに未知なる空間を冒険するワケですから」
 それにまたここに登場する新鋭俳人の作る俳句がえらくかっこいいのだ。(この本のせいで、僕のまわりではこのごろ句会が大流行である)
 またタイトルにもなっている「青春俳句講座」では、作者の俳句観がひろうされるいっぽう、大学にはいって「青春とはやるせないもの」と痛感した小林青年が、なんと自然科学のゼミで俳句の実作を選んでから俳句にとりつかれていく過程と、彼をとりまく友人たちがユーモラスに描かれている。つまりこれは五七五で青春した作者のみごとな青春小説にもなっているのである。
 とにもかくにも御一読を。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/09/28