十六歳のマリンブルー

本城美智子

集英社

           
         
         
         
         
         
         
     
 父は若くて死んだ。母と年の離れた兄が、一生懸命自分を育ててくれた。と思うと心苦しくて、本当はもう人生に絶望しかけているんだけど、そう簡単に非行に走るわけにもいかずに、仕方なく家でペットやってる女の子の話。兄ちゃんに甘えて、コンデンスミルクをなめていれば、平穏無事。
本城美智子の『十六歳のマリンブルー』(集英社)は、まあこんな調子で始まります。けれども、もちろんこのままですむわけがない。気がつけば、幼なじみは自分よりもっと屈折しているし、第一彼女は、あの江ノ島に住んでいるのだ。(この点、関西の読者にはやや不利。でも読んでネ。) (横川寿美子)

読売新聞 1987/06