さよならピンク・ピッグ

C・アドラー作
足沢良子訳 金の星社

           
         
         
         
         
         
         
     
 アマンダは十歳……完壁な妻、完壁な母、完壁な女性、をめざすお母さんは、まず完壁な夫ではない、という理由でリコンし、完壁な母であるためには完壁な子ども、がいないとできませんから、子どもにもそれを要求します。
 といっても、できのいいお兄さんにだけね。
 幸か不幸か兄貴はできがよかった……でお母さんは有頂天、ぶきっちょで内気な二番目のアマンダになんか目もくれない……。
 アマンダがお母さん、あのね…といいかけるたびに返ってくるのはアマンダ、宿題した? あれは? これは? というセリフばかリ…。
 兄貴は味方になってくれるんだけどね。
 で、ついにアマンダは教母さまがくれたピンクの水晶のブタが口をきいてくれる世界、に逃避してしまいます。
 このまんまいったらかなりマズイことになったでしょうが、幸い、といったらなんですが、お兄さんの大学入学資金がつくれなかったお母さんは思いあまって勤め先の銀行の金を横領し、捕まっちゃうんだ!
 これって日本の子どもの本にはまずあリえないような展開で、アメリカらしいっちゃアメリカらしいよね。
 なんという大胆でストレートな展開、ストーリー……。
 でもおかげでアマンダはおばあちゃんに引きとられ(お母さんは刑務所いきだもん)、兄貴はようやくお母さんのお守リから解放されほっとして軍隊にいき、アマンダの水晶のブタは口をきかなくなるんです。
 日本にもこのテの女はたくさんいるのに子どもの本には……ないねえ。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)