スパイになりたいハリエットのいじめ解決法

ルイズ・フィッツヒュー 作・絵
鴻巣 友季子:訳 講談社 1995.5

           
         
         
         
         
         
         
     
 ハリエットは小学校六年生の小説家になりたい女の子。小説家はまず人間を観察しなければいけないと家庭教師に教わってからスパイ活動をはじめるようになり、級友の事、両親や使用人の事、近所のことなどをノートにメモすることにしました。
 この作品は三部構成になっていて第一部は家庭教師のオール・ゴーリさんとハリエットの関わりを中心にしています。家庭教師とその婚約者とハリエットの三人で両親不在の夜に映画を見、楽しい時間を過ごして帰宅すると両親がおこってまっているのです。その事件で家庭教師は辞めてしまいます。この人はハリエットにしかる時もほめる時も考えさせる時も本の一文を引用するほど、とてもたくさん本を読んでいる家庭教師だったのです。
 第二部は、スパイ活動の様子やハリエットの学校での生活を書いています。一日寝ている未亡人や過食症の男の子、陽気な夫婦やなんでも買った物を自慢したがる老夫婦などの観察をはじめます。ある日スパイ活動のノートの内容を読まれ、その内容に怒った級友たちから仲間外れにされてしまいますが、自分を無視する級友の行動をスパイの的(まと)としてじっくりと観察するのです。
 第三部ではハリエットがますますスパイ活動に熱中しノートの内容も冴えていきます。級友たちの攻撃(いじめ)も、スパイ活動を楽しんでいるハリエットには効果がないのです。
 学校内でハリエットの文章がみんなに読まれるようになります。ハリエットはひたすら観察し書く事によってこのいじめを乗り切るのです。誰かに解決してもらうのではなく、自分で頑張ったとてもたのもしいハリエットの話に子どもたちが勇気づけられるようです。(山田千都留
読書会てつぼう:発行 1996/09/19