素直にわがまま

偕成社 1990



           
         
         
         
         
         
         
     
 対談集って、雰囲気がよく伝わるし、ぽろっと面白い言葉がこぼれたりすることがあって、それがとってもいい。だから企画が良くて、話が噛み合い、楽しいキャッチボールが展開されれば、素晴らしいものになるはず。その見本が『素直にわがまま』。これはいちおう絵本がテーマになってるけど、長新太、糸井重里、スズキコージ、五味太郎、司修、岸田今日子、吉本ばななといった人たちが、それぞれの立場から、それぞれの作品を語り合うというもので、どれも自分にとっての絵本、小説、映画が中心になっている。
 いくつか、面白かった言葉を拾ってみよう。
 「子どものものを書くとき、自分の問題意識や絶望を不用意に子どもに伝えようとするのはまちがいだと思う。映画も同じで問題意識で作っちゃだめなんです。『ナウシカ』はそうじゃない……自然保護運動のためじゃない」(宮崎駿)
 「変なおじさんですよ。谷川さんは。やっぱり近代人の自我とはかなり違うんじゃないかな」(高橋源一郎)「わたくしには『わたくし』がいないんですね、きっと」(谷川俊太郎)
 「絵は、描いてしまえばそういうものになっていくじゃない。ウマイとかヘタとかいうのじゃなくて、自分が描ける範囲のものが描けて、そのうちに、その人じゃなきゃ描けないっていう描き方がでてきちゃうものでね。絵が描けないっていうのは誤解ですよ」(佐野洋子)
 五百ページ、一気に読めます。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席91/01/13