少年殺人事件

ローレンス・ヤップ:作
小林宏明:訳 晶文社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 ティーンズに向いた良質のミステリーにめぐり合うのは、なかなか大変です。
 主人公の僕の親友は、ロックンローラー的に生きているいたずらなヤツ。二人で乗っていた車のブレーキが利かなくなって横転し、親友は目の前で即死します。ただの自動車事故として処理され、皆が忘れていこうとするのに、僕だけが事故に見せかけた殺人ではないかと気付き、親友の妹の協力を得て犯人を探し出します。
 けれども、僕が転校してくる前に起こした不祥事が知られてしまい、僕はだれからも信用してもらえなくなります。孤独の中で、僕はたった一人で犯人と対峙することになるのです。
 ミステリーとしての盛り上がりも優れていますが、それ以上に、両親が離婚して父親と二人で暮らすティーンエージャーの心の動きと、父親の心の痛みも、共によく描かれていて、読みごたえがあります。
 作者のヤップは『ドラゴン複葉機よ、飛べ』でニューベリー賞を受賞している実力派です。
 
(弥)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化富田真珠子