とうさんは忍者

八束澄子:作
村上豊:絵 教育画劇

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 学校へ行くのが嫌いな子どもがいるように、仕事に行くのが嫌いなお父さんもいます。
 この本の主人公「ぼく」のお父さんも、突然会社に行けなくなりました。
 今までは「仕事、仕事」であまり家にいなかったお父さんが、昼から部屋を暗くして寝ていると、家族まで息苦しくなります。
 とりわけ、テレビゲームができなくなった弟の不満はつもる一方です。
 お父さんの代わりに勤め始めたお母さん。家で台所仕事をするようになったお父さん。弟が家出したり、親子げんかや夫婦げんかがおきたりで「ぼく」の家は大ゆれです。
 私立中学をめざして塾通いをしている「ぼく」は一体どうなるのでしょう?
 受験発表の日。
 家に向かう「ぼく」と、帰りが遅いのを心配して迎えに出たお父さんは、歩道橋の上で鉢合わせします。
 暮れかけた街の風景をながめながらの父と子の会話。
 偶然その橋の下を通る弟と、友達とのほほえましいやりとりから「ぼく」の家族のこれからがしのばれ、後味よく終わります。
 (く)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化富田真珠子