なべのふた

渡辺 とみ:文 
小沢 良吉:絵 文化出版局

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 むかーし山奥の一軒家に、じいさまとばあさまが住んでいました。
 降り続いた雪がぱったりやんだある日、じいさまはばあさまに頼まれ、町まで買い物にいきました。
 手おけ、なた、油揚げ、コンブなどたくさんの買い物をすませて、帰りを急ぎます。
 峠にさしかかると、たのまれたなべのふたを、買い忘れたことに気がつきます。がっかりしたじいさまの足元に、コロコロッとなべのふたが転がってきました。近づいてよくみると、なべのふたのはしっこに、小さなしっぽが出ています。しょげかえったじいさまは、よいみちづれが現れたと、気づかぬふりをして一緒に帰っていきます。
 あとがきで、作者は幼いころのふるさと雪国の印象を表現してみたと、言っていますが、ほのぼのとしたユーモアが、懐かしい昔話を感じさせてくれます。
 また、小沢良吉さんのすばらしい挿絵が、じいさまの優しい人柄や、しぐさを浮きぼりにしています。
 本そのものの装丁もすばらしく、楽しませてくれます。
(安)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山本京子