なみにきをつけてシャーリー

ジョン・バーニンガム/作  へんみ まさなお/訳 
 ほるぷ出版 1978

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 ええと、この本のヒロイン、シャーリーはいくつくらいかな? みたとこ八才? 九才? そんなとこです。お父さんとお母さんとシャーリーは、三人で水遊びに海辺へきたのです。
 ところが……書いてあるセリフは実にみごとに一行残らずお母さんのおこごと……。
 曰く水は冷たくてとても泳げないわよ──
 新しいくつをタールで汚しちゃダメよ……エトセトラエトセトラ──
 左ページの水彩は現実……デッキチェアを出してお母さんは編物お父さんは新聞と昼寝。
 右ページの油絵はシャーリーの空想……一人でつまんないシャーリーは海賊船に乗り込み、丁々発止のチャンバラのあげく、宝島の地図を持ってボートで小島へ……。
 この両親に悪気はありません。でも、おそらく一人っ子のシャーリーが子ども一人でぽつんと海辺に放っておかれてもつまんないんじゃなかろうか、とは想像できない人たちです娘の友だちも四五人一緒に連れてきて……などとは思わないのです。たまの休みだもの家族水入らずで……なのでしょう。でも、だったら自分たちが遊んでやろう、かまってやろう、とも思わないのです。海岸で、初めて会った知らない子たちと、どうして一緒に遊ばないのかしら、といって平気で不思議がる人たちなのです。
それができりゃあ、苦労はないやね。
 この絵本の裏には四才から、とありますが四つでこの絵本に共感するなんて悲劇だよ。高校生にはメチャクチャウケました。こういう親って、いっぱい、いるよね〜だそうです。
 この絵本を、でも子どもってたくましいわね〜、親はバカでも子どもは育つんだからと大人たちが自分に都合よく解釈して欲しくない、というのが私の願いです。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化安田夏菜