のっぽのサラ

パトリシア・マクラクラン作/金原瑞人訳
ベネッセコーポレーション

           
         
         
         
         
         
         
    

 最近、私の住む地域で女性の友人たちのグループがレストランを開きました。何でも名前をつける
のが好きな私が名づけ親を頼まれ、「サラ」と決めました。大好きな物語『のっぽのサラ』のイメージを思い浮かべながら(もちろんアブラハムの妻のサラのこともちょっと考えて)。そして、シルバー向きメニューを中心に、地域の交わりの場ともなる喫茶レストラン「サラ」が開店したわけでした。
 物語のサラは、メイン州の海辺から大草原にやってきた、「のっぽで不細工な」女性です。
 この本が一九八五年にアメリカのすぐれた児童文学に与えられるニューベリー賞を受けた時、人びとは意外に思ったようです。長編の大作ではなく、あまりにシンプルで短い、詩のような美しさを持つ作品だったからでした。
大草原の中の家で、パパと暮らす姉弟。小さな弟のケイレブはママを覚えていません。彼の生まれた翌日にママは死んだのです。物語は姉のアンナの視点で語られます。パパが新聞に出した「たすけもとむ」という広告を見て、はる
ばるやってきたのがサラでした。
 サラは、来る前からその手紙でもう子どもたちを魅了しました。ネコのアザラシちゃんを連れて草原の暮らしに加わった彼女は、子どもたちに海の話をしてくれ、ともに歌をうたい、自然体で家族に溶けこんでいきます。小さいケイレブは、町に馬車で出かけたサラがそのまま海辺に帰ってしまうのではないかと心配でなりません。でもサラは、海の色をした色鉛筆をおみやげに戻ってくるのでした。
 子どもたちのパパとサラが結婚するのは、続編の『草原のサラ』になってからですが、この作品は、また<血縁>をこえた愛の家族を描いてもいます。直接キリスト教と関わりなくても、<高ぶらない、寛容な愛>の姿を感じるのです。小学校高学年から大人まで。(きどのりこ
『こころの友』1999.04