農夫ジャイルズの冒険

J・R・R・トールキン・作
吉田新一・訳 評論社

           
         
         
         
         
         
         
    
    


 その昔、この地主には方々に竜や巨人がいて、時に人間を苦しめたものです。彼らと戦った勇敢な騎士のお話もたくさん伝えられています。これもブリテン島(今のイギリス)の中王国であった、そんな竜退治の物語です。ただし、このお話の騎士たちは弱虫ばかりで、たちまち竜に踏みつぶされ、口から出す炎に焼かれ、われ先に逃げてしまいました。そこで、登場するのが我らの勇士農夫のジャイルズです。
 ひょんなことから巨人をやっつけたジャイルズは、英雄として王様から古ぼけた剣(実はすごい力を持つ剣)を授けられ、灰色のめす馬に乗って竜退治に行くはめになりました。大昔の竜王の血筋を引く大金持ちで、ずるがしこい黄金竜と、ジャイルズのかけひき、知恵比べは絶妙で、思わずやきもきしたり、にやにや笑わされたり、中世の騎士物語をひっくり返したお話作りといい、さすがはイギリス・ファンタジーの名手の作品です。
 ファミコンソフトやゲームブックの下敷きになっているといわれる、トールキンの本格的長編ファンタジー「ホビットの冒険」(岩波書店)「指輪物語」(評論社)にも挑戦してみませんか。(和)
静岡子どもの本を読む会

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