ビート・キッズ

風野 潮・作 
講談社 1998.7

           
         
         
         
         
         
         
     
 中学生の横山英二が大阪弁で語る、ファミリー青春友情物語。英二は素直で朗らかでお人好しの天然ボケ。英二は管野七生に誘われ、否応なしにブラスバンド部に入部する。七生は成績優秀、楽器は万能で、特にドラムはプロ並み。しかし性格は高飛車で、独断的で、プライドも高い。
 英二は、ブラスバンドのことも、楽器のこともチンプンカンプンだったが、一度、太鼓(パーカッション)を叩いて、そのとりこになってしまう。英二が太鼓を叩く様は、お腹に響いてくる太鼓の弾ける音を聞くように心地よく文章から伝わってくる。 英二と七生の掛合いに加え、酒飲みで博打好きだけど憎めない英二の父のボケ方も大いに笑わせてくれる。
 「キレル」とか「ナイフ」とか物騒なことで取り沙汰される中学生。でも、そんな恐ろしい面ではなく、夢中になれるものや友情、家族という心なごませ、熱くなれるところが描かれている。人をほっこりさせ自然になごませてくれる英二。七生は英二と親しくなるにつれて角がとれていく。押しつけじゃなく包み込むような優しさが人の心を癒し、心を開かせるのだ。
 そんな英二だが、病弱な母親や逃げ腰の父親に代わって、家族のことを背負い込み、身動きがとれなくなってしまう。でも、その苦しみや悲しみをぶつけたとき、父も反省し変わっていく。
 仮面で武装し内面は見せず、他人を攻撃することで、自分を守りがちな人が多い世の中。でも、背負いこまず、心を閉じこめずにやっていこう、と著者の思いが伝わってくる。
 大阪弁のあたたかさとキャラクターの魅力、巻末の作者のイラスト付の解説も含め、笑って泣かせる作品。(石川喜子
読書会てつぼう:発行 1999/01/28