文学の森を歩く

池内紀・文 筑摩書房

           
         
         
         
         
         
         
    
    


 文学〈道案内〉のこの本。「いつだっていいのだわ、結婚なんて」―野上弥生子「真知子」をこうとりあげます。永井荷風「ふらんす物語」、石坂洋次郎「若い人」と三十六の本が、作品、作者の紹介・作品抄・エッセーにより案内されます。福沢諭吉「学問のすすめ」は―天の道理・人の情。食欲、ならびに肥満について―はサラバン「美味礼賛」。いのちの倹約―山本周五郎「季節のない街」というぐあいです。
 さてこの本が静岡市立図書館ヤングアダルトコーナーにあり、その書架には、『ちくま文学の森』(全十五巻・別巻一)が並んでいて、「恐ろしい話」「心洗われる話」「怠けものの話」「ことばの探偵」「旅ゆけば物語」……と“文学の森”の歩き方のユニークなシリーズです。第一巻「美しい恋の物語」はすでにだれかが借りていました。ここには、尾崎豊の作品集、北沢杏子“おとなになること”エイズと性感染症の本。「君の可能性」の隣には、「東京デートスポット」。リハーノフ「なぜ、おとなになるの?」おとなになる喜び、不安、苦しみの物語もある。
 昔、こどもが小説を読むのはいけないこと。机の引き出しに本を入れたまま読んでいて親の声がするとさっと引き出しを閉めたものです。それとは逆にこんどはおとなたちにとっては〈未知〉のヤングの世界を、このコーナーに探ってみては……。
 (仁)=静岡子どもの本を読む会
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