フランケンシュタイン

M・シェリー・原作c1918
山中 恒・文 高橋 常政・絵 講談社1997.12

           
         
         
         
         
         
         
     
 イギリスの作家、M・シェリーの『フランケンシュタイン』は、恐ろしいモンスターとその造り手である科学者が主人公の、映画でお馴染みの怪奇小説である。児童文学者山中恒・文による『フランケンシュタイン』では主人公はミツヒロという少年である。読者は彼の置かれている状況とモンスターの復讐の心を感じながら、ミツヒロと共に物語を読み進んで行く。
 いじめを受けていたミツヒロが車中で知り合った岡村という男性から、「今起こっていることは前世で未解決だったことで、今解決しておかないとまた繰り返しになる」と言われ、自分の前世が知りたくなった。ミツヒロは岡村に催眠術をかけてもらい、潜在意識にある「自分の前世」を話し出した。その時のビデオを見たミツヒロは、自分の前世がモンスターで、親の名前は科学者フランケンシュタインであることを知った。
 ミツヒロは図書館でシェリーの『フランケンシュタイン』を借りて読み出した。その中でモンスターは、自分を作り出したフランケンシュタインに復讐する。ぼくは誰も殺したくない。「今解決しておかないと…」と、ミツヒロは現世での復讐の相手を探し始めた。話し合い、仲直りをしておこう。しかしフランケンシュタインの生まれ変わりは誰なのだろう。友達だろうか、ぼくのパパだろうか。ミツヒロは真剣に悩む。そして、意外な結末にほっと一息をつく。
 『痛快世界の冒険文学』は、様々の分野の著名人が世界の名作を担当している。シリーズの担当者が「単なる抄訳でも、別の作品への書き換えでもなく、原作の面白さを生かした新しい翻案、執筆者の個性に任せる」と言っている通り、この『フランケンシュタイン』は原作を重視しつつ、かつ山中恒の作品となっている。日本児童文学ではないが、あえてここで紹介した。
 読み終えると、原作『フランケンシュタイン』を読んでみたくなる。まさに、そこがシリーズの狙いではないだろうか。(池村奈津子
読書会てつぼう:発行 1996/09/19