浮浪児の栄光

佐野美津男著 小峰書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 どういうわけか、日本の児童文学のなかでは、まあ山中恒、は一応名前が通ってるとしても大海赫、佐野美津男、そのほか何人か……とてもマトモな仕事をしている人たちが、全然認められてないんじゃないか、と思うことがたびたびあります。
 でもこの二人は〃本の探偵依頼〃の常連さんです。今まで何十人からきたことか! そういうのをみても、大人たちよりずっと子どものほうが見る眼かあると思っちゃうよ。
 佐野さんで一番探して! が多いのは『ピカピカのぎろちょん』ですが、ここでは〃燦然〃と輝く『浮浪児の栄光』を-。
 彼は戦争で親を失い、松戸のババア、のとこにたどリ着くのですが、そこでそのおばあちゃんにさんざんいじめられるのね。
 この本の後書きに、結局オレはババアに負けたのだ……血がつながっていると思って優しくしてもらえると思ったオレが悪いのだ……と彼は書いてますが、この本を書き、いい年をして、松戸の土手でバカヤローと叫ぶまで、彼は傷つき、その傷を、癒えないまま引きずって生き抜いてきたのです。
 きれいごとじゃない本当の話を……自己憐澗ではなく怒りを描く佐野美津男は、まあ確かに日本ウケする作家ではないけどね。
 子どもたちはその違いを感じわけ、ちゃんと支持してくれるのに、どうして大人になると変わっちゃうのかしらね?
 ま、それはともかく、欧米の作家たちの本と肩を並べられる数少ない日本の本だと私は思います。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)