ハイジ

J・シュピーリ:作
パウル・ハイ:画 天川 澄子:訳 福音館書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 「ハイジ」は、日本では「アルプスの少女」という題名でアニメや絵本、ダイジェスト版とさまざまの形で出版されています。子どもたちが大きくなる間に一度や二度出合う機会があります。それほど一般的な本ですが、完訳を春休みに挑戦したらどうでしょう。
 ハイジは天性の明るい素直な心を持った子どもです。すばらしいアルプスの自然の中でハイジの純真な生き方が、頑固で人間嫌いなアルムじいさんの気持ちを和らげます。アルプスの山々にうつる夕日の色、乾し草のにおいや、もみの木の風に揺れる音をこの本を読みながら体験できます。自然の中でのびのびと生活したハイジが大都会に出て、画一化された教育、うわべだけのしつけを受けて病気になります。教育のあり方をそれとなく教えてくれます。
 著者の育った家庭環境に多分に影響されたキリスト教信仰が語られてはいますが、その時代の人々の生活様式も知ることができます。美しい自然と明るいハイジを心から楽しみ、文学の持っている力を感じさせられます。
 
(小)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山本京子