花を飾ってくださるのなら

尾山奈々

保坂展人編、講談社


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 題名に『花を飾ってくださるのなら』とある。「花」とは、死者に献げる花のこと。その花を、学校の自分の机にだけは飾ってくれるな、と書き遺して少女は自殺した。なのに、結局花は彼女の席に飾られた。
 これは尾山奈々さんという、実在の少女の遺書に関する本である。「遺書」とは文字どおりの遺書二通。そして、彼女が中学三年間を担任の教師にあてて書き続けた膨大な量の「生活記録」。綴られた文章はどれも短いが、ユーモラスな軽いノリの文体で、ものごとの本質を見事につく。彼女は学校が嫌いだった・・。
 今日、十代向きのマンガ・小説などを読むと、まじめで頭の良い子はとかく人気がない。特に女の子は、ドジで可愛くなければ人間でないかのようだ。恐らく現実の世界にも、それに近い情況があるのだろう。奈々さんの文章からは、確かに彼女の尋常でない頭の良さが感じられる。しかし、だからといって、学校に対する彼女の悩みがフツーのあなたが感じている悩みと違っているわけではない。(横川寿美子)

読売新聞 1987/02