ポケットのたからもの

レベッ力・コーディル:作/三木卓:訳
あかね書房

           
         
         
         
         
         
         
     
 ジェイはお父さんとお母さんと三人で谷間の古い農場に住んでいる六歳の男の子でした。だからつまり、ナイーブで考え深い小さい男の子にとっては、驚きと喜びのあふれる世界にいたわけです。
 たとえば、はだしの足の指の間からさわさわっと出てくる細かい気持ちのいい土を楽しんだり観察することや、チョウが花にとまって蜜を吸っているところや、クモが巣をはるところをずっと見ていたリ、木の実を拾ったり、川の石をひっくり返してみたりね。
 で、こういうことは、いまさら言うまでもないことですが、ジェイがたった一人でしていたことでした。
 感受性の強い子どもにとって自然は、言ってみれば完全な世界です。
 だからジェイにとって大変だったのは、学校へ行って人間の子どもたちとつき合うことでした。
 だから初めて学校へ行くときに(ァメリカの学校は九月から始まリます)ジェイは可愛がってるコオロギを連れて行くわけです。
 先生はコオロギの声を聞きつけて、まず出しなさい、と言いました。そのあとジェイに、前に出てコオロギのことを話すように言いました。
ジェイはコオロギのことなら話せたわけで、無事にクラスの中の、面白くて役に立つ人物として定着できました。
 いまの日本だったら……どうかな。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』(リブリオ出版 1997/09/20
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