マールのかくれんぼ

二宮由紀子:作 渡辺洋二:絵
ポプラ社 2002

           
         
         
         
         
         
         
    
 子どもから大人になる、つまり成長の目に見える形は、大きくなる、ですね。
 が、マールくんはゆきだるま。だから、時間が過ぎるにつれ、大きくなるのではなく、溶けて段々小さくなるのが成長です。マールの早く大人になりたい願望は、「おとうさんみたいに、はやく、ちいさく、なりたいな・・・!」
 この発想の転換がすごい。
 おとうさんもおかあさんも、子どもに何か言うとき上を向いて話さなければならないの。ふぶきの日は、小さな大人は、吹き飛ばされて危険だから家の外に出られない。マールは大きいから大丈夫だけど、自分がまだ子どもだと認めたくないから、外で遊ばない。そこでおとうさんがかくれんぼをしようと言い出す。子どもたちは身体が大きく不利だからやりたがらないけど、マールはとうとう根負けします。果たしてマールは隠れきれるか?
 自分の方が有利なのをわかっていて、子どもとマジでかくれんぼするおとうさんの子どもっぽさがいいですね。
 「成長」で悩んでいる人の肩の力を抜かせてくれますよ、これは。もう充分に成長したなんて思っている大人にも、ホントにそうか? って考え直させてくれます。前作『ゆきだるまのマール』(二宮由紀子:作 渡辺洋二:絵 ポプラ社 2001)と併せて読んでくださいね。(ひこ・田中)
 読売新聞2003.02.10