見えない絵本

長谷川集平作
太田大八・絵
理論社

           
         
         
         
         
         
         
     
 『見えない絵本』はとても奇妙な物語です。
 正直いって私には、この話がいまいちわかってないんじゃないか、という不安がある。だって、一人の男の子が長崎の親せきに遊びに行って、小説を書いてる自由人のおじさんから、原爆や隠れキリシタンの話を聞いて、要するに長崎という街を丸ごとぶつけられてカルチャーショツクを受けるというストーリー。そのあと海でマリアさまと出会って目が見えなくなっちゃうの。九日間だけ-。
 なんでよ!? なんてきかないで、だからいったじゃない? 私だってわからないんだって……。
 うん、やっぱり私が長崎をよく知らないからかなあ、それにキリスト教のこともよくわからないし。今まで、長崎というところがあるのはもちろん知ってたし、歴史的事実だって一応習ってると思うけど、そこがどういうところか、ちゃんと考えたことはなかった(主人公と同じにね)。でも今はこの本のおかげで、長崎という独特の歴史をもつ街が、私のなかにしっかりいすわってしまって、てこでも出てってくれそうにない気がする。日本人なら一度は来てくれなくちゃ、という声がきこえてくるような、不思議な感じがしています。
 うん、ちゃんと、行くからね!(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)

朝日新聞1989/07/09