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![]() おっぱいが大きくなり始めたミカに、男の子たちはドッジボールをやっても手加減しだす。ミカはそういった男の子たちの女扱いに苛立つのだ。「おっぱいなんか大きくならんような手術したい」と、ミカは涙を流す。その涙を受けて、オトトイがだんだん大きくなっていくから奇妙だが、この設定はユニークで印象的だ。 双子の六年生の兄妹の、双子ならではの心の通い合いを中心に、この年代の子どもたちの性に対する戸惑いや不安を丁寧に拾い上げ、その内面の微妙な移ろいが哀切でもある。 大人が忘れてしまった少年少女期の、しなやかで危うい心の変化を、オトトイという得体の知れない生き物を介在させながら見事に浮かび上がらせる。ぼくの親友のコウジが、ミカに好きだと打ち明けた後のミカの困惑もまた読み手の心を打つ。思春期に向かう少年少女の等身大の感情の流れが鮮やかに描かれた好作品である。(野上暁)
産経新聞1999/12/07
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