水の惑星

ライアル・ワトソン/写真−ジェリー・ダービシャー

内田美恵訳・河出書房新社


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 「何か大いなる意図による奇跡としか考えられないような偶然」によって地球をうるおすことになった一三・五億立方キロメートルの水が、この本の主人公である。奇跡というのも「液体状の水は、この銀河系のどこをさがしても地球外には一滴もみつかっていない」のである。
 ワトソンは広い科学的知識を駆使して、地球の誕生と水との関係や、水の持つ不思議な性質と生い立ちを楽しく紹介してくれる。通常の二倍の原子量の水素二個を持つ重水や、氷点が零下四〇度、沸点が摂氏四一五度のポリウォーターという「水」の話。また水は究極の溶剤で、あらゆるものを溶解し、海水中には全世界の人間を百万長者にするくらいの金が溶けこんでいるといった話。
 しかしこの本の大きな特徴は、生物の体内の水の話や、環境のなかで成長したり死んだりする水の話、さらには密封容器中の水を日食のときに振動させると性質が変わるといった話などをまじえながら、「生命と宇宙との接点、いや、生命のもうひとつの感覚器」としての水、また数知れない神秘をひめた「生き物」としての水を描こうとしていることだろう。
 この本の約半分をしめるカラー写真もため息がでるほど美しいが、それ以上に「生き物」としての水をあざやかにとらえているのがいい。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/07/10