モンシル姉さん

権正生/作
記子/訳、 朴民宜/画 てらいんく

           
         
         
         
         
         
         
    
 この六月の南北首脳会談で、朝鮮半島の分断状況には、急速に明るいきざしが見えてきました。
 離散家族の問題など、深い傷跡を残した朝鮮戦争から五〇年。日本は分断のきっかけをつくったばかりか、兵器や物資の供給基地となり、その特需で経済を成長させたのでした。
 少女モンシルが生き抜いたのは、こうした戦争のさなかです。日本にいた一家は解放後、祖国の村に戻りますが、父親には職がなく、あまりの貧乏暮らしに耐えかねた
母親はモンシルを連れて家を出、他の村の男性に嫁ぎます。その母の新しい夫に暴力をふるわれたモンシルは、片足が不自由になってしまいます。ふたたび一人で父親のもとへ戻りますが、父親は再婚。新しい母親は優しい人でしたが病身で、妹のナンナミを生んでから亡くなります。ちょうど戦争が勃発し、父親は戦場へかりだされ、十歳のモンシルは貧困の中でひとりぼっちになり、しかも幼い妹を育てていかねばなりませんでした。
 北側の人民軍、南側の国軍の戦況によって翻弄される小さな村の悲劇。物乞いをしてまで、必死に妹を育てるモンシル。でもモンシルはけなげで強いばかりではなく、苛酷な現実の中で人が生きる意味を考え抜く、心に大きな愛を抱いた少女なのです。作者は夢実という名前にも、南北統一の夢を託しているように思われます。物語は三十年後のモンシルの姿で印象的に終わりますが、今も世界に大勢のモンシルがいることを思います。
 この作品は韓国でロング・セラーとなり、TVドラマにもなりました。韓国を代表する児童文学者である作者の権正生さんは、安東在住の熱心なクリスチャン作家です。この作品は八〇年代のはじめ教会の雑誌に連載されましたが、北と南を同じスタンスで描いたことで、当局から一時連載を禁止されたといういきさつがありました。(きどのりこ
『こころの友』2000.08